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Love and Romance Short Stories 1 甘い記憶 (前編)

暑いですね~。
みなさん、お元気にしていらっしゃいますか?
私は、毎日プールや虫取りやら、子どものお相手してます。
毎日更新できずに、見に来てくださっている方には本当にすみません。

また、前作のラブレターでは、たくさんの拍手、ありがとうございました。


こちらは、2話完結の短編です。
このお話は、雪の上のラブレター 22(R18) の後の爽子のとまどいを書いたものですが、
このお話だけ読んでも、問題ないと思います。
しかし、いつも爽子をとまどわせてしまうのは、私なのですが。

短編書くのは、久しぶりです。ん~どうかな?って思われちゃうかもしれませんが、
また、お付き合い頂けるとうれしいです。






     この気持ちに名前を付けるとしたら、なんてつければいいんだろう。

ふわふわした気分になって、空を飛んでるみたいに、浮かれたり。
知らない世界に連れて行かれるように、不安になって怯えたり。

甘い幸福感に、心細くなるような不安。
優しい刺激に、乱れる心。

忘れてしまったほうがいいような気もするし、
知りたいような気も、する。

今までの世界が変わって、別の世界にとりこまれるような不安。

     あの時の甘い記憶に、今、心も体も揺さぶられている。





校門までの緩やかな坂道は、桜並木になっている。
今は雪に覆われたままだが、春になると、淡い色の花びらが舞いおちてくる道だ。
木々につもっている雪が、時折朝日を反射して、眩しく瞬く。
いつも歩いている坂道なのに、校門までの道がやたらと長く感じて、
爽子は目を細めて、坂の上を見上げた。

今思うと、もしかして、夢だったのかもしれない。
二人でいたあの時間……あの夜の出来事。
甘酸っぱく思いだされる、風早との夜。
経験したことのない感覚。
心臓が破裂しそうなくらいに、高揚した気持ち。
もし、誰かに「夢だよ」って言われても、そのまま納得できるような気がする。

……でも、はっきり、覚えてる。
頬を包み込む、風早くんの手。
顔をうずめた広い胸。
唇に感じた、やわらかな感触。

甘い記憶を思い出した途端に、ゆっくりと動いていた、体の中のすべての器官が、
急に活発に動きはじめるような気がした。
甘い感覚に、心が、飲み込まれそうになるのをふせぐように、
正気を保つために両手で頬をピタピタとたたく。
体中にまとわりつく、快い感覚を振り払うように、急ぎ足で教室までの階段を昇っていった。

「おはよう」
顔をみたクラスメートに、次々と声をかけていく。

「おはよう、貞子」
答えてくれた相手に、もう一度立ち止まって、丁寧に挨拶をする。
いつもと同じ、朝のあいさつ、変わらない朝のざわつき。
歩きながら、目は自然に窓際の風早たちのいる一角に、吸い寄せられていく。
友人たちと話していた風早が、気がついたように爽子のほうを向いた。

「おはよー、黒沼」

何度挨拶を交わしても、惹きつけられる、
すがすがしい笑顔に、穏やかな優しい声。
風早の姿を目にすると、いつも同じように、胸が躍るような心地よい緊張感が、
体を取り囲むように覆っていく。
だが、今日は感情が高ぶっていくような、緊張感を強く、感じる。

「お、おはよう」
はっと姿勢を正しながら、なんとか挨拶を交わした。

自分の気持ちを、素直に受けとめたからだろうか。
風早を目の前にして、感じる気もちが、今までと違うような気がする。
なんだか、風早がやけに、大人びて見える。
ブレザー姿だからか、余計にカッコいい。

抱きしめられた時に感じた、心臓がバクバクする緊張が、
体中によみがえってくるような気がして、足早に風早の近くを通りすぎる。
イスに座ってほっとして、机の横にカバンをかけようとした時に、
ふと、目の前に気配を感じて、顔をあげた。

真っすぐにのびた柔らかそうな髪の一本一本が、
確認できるほど近くに、風早の顔がある。

「わわっ!」と思わず座りながら、のけぞった。

「黒沼、なんか……変? どーしたの?」

あれこれ悩んでいるこちらの気持ちを全く知らずに、机に両手をつきながら、
「ん?」と、屈託のない素直な笑顔で、顔をのぞきこんでくる。

ち、近いっ!!
覗きこまれてさらに、顔と顔の距離がぐんと近くなった。
目の前に、意志の強そうな、印象的な黒い瞳が、迫っている。
あまりの近さに目をそらすことができずに、緊張で目を大きく見開いた。
どうか、今、顔が赤くなってませんように、と
必死に心の中で願う。

「お、おはよう……」
何ていったらいいのか分からずに、二度も挨拶をしてしまった。
しまった……!と、おかしな事を口走ったことに、すぐに気付いたが、風早の耳にはしっかりと届いたようで、え?という不思議そうな顔をしている。

「どーかした?」

こちらの焦りなどおかまいなしで、更に距離が縮められる。
お願いだから、そんな無邪気で、爽やかな笑顔を近づけないでほしい。
こんなに至近距離で、そんなに魅力ある笑顔を振りまかれると、
顔に熱が集まるのを、止められない。
これ以上のけぞることができないくらいに、首を後ろにそらした。

「やっ、ちょ、ちょっと、今日、暑いよね、なんか、汗かいちゃって」

もうこれ以上は、イスがひっくり返ってしまいそうだ。
しかも、外はまだ雪が残っているのに、また変なことを口にしてしまった。
挨拶に続いて二回目の失敗。    悪循環。

失敗続きの自分に、本当に体が熱くなってきて、ハンカチでパタパタと顔をあおいだ。
突拍子のない受け答えに、風早は一瞬眉をよせたように見えたが、
やがてふっと、軽く笑った。
そして「ん」と納得したように目を細め、横を通り過ぎて行った。

風早の後姿を見送りながら、ほっーと胸をなでおろす。
緊張で強張っていた頬の力が、がくんと抜けおちたので、ほっぺたをふくらませながら、ふうーっと大きく息を吐き出した。

困ったなあ……今日は風早くんのこと、見れないかも……!?
見れない……でも、見たいな。
見れるのはきっと、後ろ姿だけ。
それに、見ようと思わなくても、自然に目が追ってしまう。
目線の先にはいつも、風早くんがいて、目が離せない。
だけど、今日はもう、後ろ姿しか、見れそうにない……

授業の間も、数列前に座る風早の後ろ姿を眺めていた。
……広い背中、時々、退屈そうにシャーペンを回してる。
やわらかそうな黒い髪、襟足にかかる髪が少し伸びてるかな?

気づかれないのをいいことに、図々しいくらいにみつめてしまう。
今しかみれないとばかりに、穴があくほど見つめていると、
突然、風早がくるっと爽子のほうを向いた。

目が合った    
目が合った瞬間に一気に顔が熱くなって、
思わず、ぱっと下を向いてしまった。
シャーペンを持つ手に、力が入る。
静かな教室の中で、自分の正直な心臓の音だけが、響いているような気がする。

どうしよう~~! 
絶対、絶対変に思われたよね。
でも、今は、顔、あげられないっ!

落ち着きを取り戻そうと思って、ゆっくり30秒頭で数える。
もう、大丈夫かなっと、そおっと顔をあげると、何事もなかったように、風早は
隣の男子と話をしていた。

風早くんは……いつもと同じだなあ。
私だけ……だよね。
こんなに、気持ちが高ぶっているの。

爽子はこっそりため息をついた。

その日、視線が絡まると、風早はいつも通りの柔らかな微笑みを、返してくれた。
もちろんそんな時は、自分も笑顔を返しているつもりなのだが、
今日に限っては、どうも引きつった笑いをしているような気がする。
それに決まって、視線を先にそらしてしまうのは、爽子のほうだった。

風早の周りだけ、いつも通り爽やかな風が、吹いている気がする。
自分ばっかり、焦ってばたばたしているのが、恥ずかしくなって、
もうひとつため息をついた。




じっとしていると落ちつかないので、今日の放課後の予定は、
タネまきをすることに決定する。
今の時期に植えれば、ちょうど春の半ばくらいに、芽をだすだろう。

放課後、大切にしている花壇へ、足を向ける。
冷たい雪を払いのけて、やわらかな土の手触りを、確認するように、そっと触れた。

いつもと変わらない土の感触、温かさ、においを確認して、心が少しゆるんだ。
固くなった土を、スコップで丁寧にほぐしていく。
手を動かすうちに、変に緊張していた自分の心までも、ほぐれていく気がして、
夢中になってスコップを動かした。

芽が出るころには、今、抱えている気持ちはどうなっているんだろう。
タネが伸びやかに成長を見せるように、気持ちも変化していくだろうか?
それともこのまま……
胸にひっかかるような嫌な気持ちが、湧き出てきそうになったので、
追い払うかのように、スコップを動かすことに、集中する。

「一緒に、大きく、なろうね」

土に潜らせたタネに顔を寄せて、願いをこめるように、優しく言い聞かせた。
最後にそっと、柔らかく土を、盛る。

小さな味方を得たせいか、気持ちが少し楽になった気がする。
春に芽がでるまで、毎日、あのタネの成長を見守って行こう。
自分も少しづつでいいから、あのタネと一緒に成長していきたい。

幾分か軽くなった気持ちを抱えながら、教室のドアを開けた。
窓際の机の一角に、窓からさしこむオレンジ色の光に照らし出された風早が、腰をかけていた。












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