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君の瞳に恋してる 7

少し長めです。
お時間あるときに、ご覧ください。







「おーす、風早」「おう」
クラスメイトたちと声をかわしながら、
下駄箱の前で、靴を履き替えていたちょうどその時、
メール着信をつげる音がポケットから聞こえてきた。
こんな朝っぱらから誰だ?
ポケットの中の携帯をつかんで、確認すると
差出人は、橘やよいになっている。

「今日の予定」と、件名に書かれているそのメールを階段をのぼりながら読む。
メールを開いてみて、俺は思わず自分の目を疑った。
「今日の予定」と、書かれたメールには、橘さんからの命令ともいってもさしつかえないだろう。
風早のやるべき予定から、橘の移動授業までの予定がびっしりと書きこまれていた。

朝、登校後、飲み物を持っていく、から始まり、
休み時間は移動教室への移動の手伝い、昼休みは購買に買いだし、学食の時は移動、掃除当番、帰宅時間などと細かい予定がびっしりと書かれていた。
特に驚いたのが、橘を家に送り届けた後の予定だった。
カフェ「ラ・メール」にてバイトと書いてある。

なんだよ、これ……。
俺、こんなに色んな事すんのか?
しかもバイトって?? 
これって俺に、拒否する権利って……

慌てて階段を1段ぬかしで上りながら、
教室に駆け込み、荷物を置いた。
クラスメイトとの挨拶もそこそこに3年の教室に、
ダッシュで向かう。

3年の教室の、その中心で橘はいた。
周りをクラスメイトに囲まれ楽しそうに話しをしている。
俺の顔を見ると開口一番に、
「おはよう、翔太、飲み物買ってきた?」とたずねてきた。

俺は息をはあはあと切らして、膝に手をおきながら、
「ちょ、橘さん、飲み物、まだだけど……
それより、これ、どういうこと?」
と、いった。

「やよいでいいよ」
俺の質問を無視しながら橘さんが答えた。

「や、やよいさん、これって、この予定はともかく、
バイトって何?」
俺が息を整えながら、もう一度聞いた。

「あーそれね。 あのね、あたし、おじがカフェをやってて
その店でバイトしてんのよ。
もう推薦決まってるしね。
それなのに、こんなんじゃ行けないでしょ。 
だから翔太があたしの代わり、やるのよ。 
別に難しい仕事じゃないわよ。
カフェだから、注文とって運ぶだけ。
あ、もうマスターに話といたから、今日からいってね
もちろん、バイト料は翔太に払うから」

まるで、すぐそこで買い物してこいとでもいうような
簡単なものいいだった。
俺の意志が入る余地なんてまるでなさそうだ。

弱ったなあ。 まさかバイトさせられるなんて。
そこまでやらされるとは、思ってなかったな……

困惑した気持ちを抱えながら、ジュースを買いに1階
まで下りていった。

その日から、俺は橘さんの付き人になった。
歩いているだけで知らない3年生からも声をかけられる。
たいていのは橘さんへのことづけとか、差し入れとか、
そんなもんだった。
自分に何か用があったら、風早翔太を通してとか、
そんな風にいってるらしい。
橘さんはジョーの言った通り、有名らしく、忙しいひとだった。
掃除当番とか、委員の仕事とか、力仕事とかは全部俺の役目になった。

放課後に橘さんを自宅まで送り届けた後、
仕方なく、俺は腹を決めて、いわれた通りにバイト先にいくことにした。
「家が忙しい」とか、「接客なんてしたことない」と、一応かけあってみたが、橘さんには何をいっても無駄のようだった。

地図をみながら、探し当てたその店は国道沿いにあった。
洋館を模したようなレンガ色の建物のカフェは、
決して広くはないが、なかなか洒落た作りになっている。
海を眺められるようなテラスが設置されており、
太陽のさしこむ大きなガラス窓は、とても開放的な感じだった。

こんなオシャレなとこで俺に何ができんのかな……
一体何が待ちうけているのかと、
不安を抱えながら、店のドアを開けた。

店内は全てが真っ白な壁での部屋の中心に暖炉があった。
暖炉の周りには、木の香りのするテーブルやイスがゆったりと並んでいる。
ほっとできるような雰囲気に、俺は胸をなでおろしながら、
マスターらしき中年の人に挨拶した。
マスターは、少しひげの生えた感じのよいご主人で、
俺は、早速、手伝いをすることになった。

着替えをすませて、マスターのところに行くと、
マスターは俺をみて、うーんと考え込んだ。
俺はなんだろうと不思議に思い、マスターを顔を見つめた。
マスターはひとしきり首をひねった後、ぽん、と手をたたき、
裏からワックスクリームをもってきた。
そして俺の前髪に少しだけワックスをつけると、
額と、はっきりとした眉ががみえるように前髪をあげた。

そして満足そうにうなづきながら、俺をみていった。
「これでいいね。 うちは結構、大人のお客さんも多いから、
やよいちゃんにも、お店に出るときはきちんとお化粧してもらってるんだよ。風早くんもちょっと大人っぽくさせてもらったから、鏡を見てごらん」

言われた通りに鏡をのぞきこむと
鏡にはいままでみたことのないような自分が映っていた。

真っ白のボタンダウンのシャツに黒のベスト、長身に映える黒のスラックス。
胸元には濃いエンジ色のネクタイをつけ、スラックスの上から腰からさげるソムリエやギャルソンがつけるようなロングエプロンを巻いている。
前髪をあげたために目につく、くっきりとした男らしい眉が、
風早の雰囲気をとても大人っぽいものに変えていた。

鏡の中の自分は、とても大人びて見え、なんだか、知らない自分を見ているような気になった。

橘さんの話通り、仕事はさほど難しいものではなかった。
注文を取り、できあがった飲み物を運ぶ。
もともと物おじしない性格が幸いして、にっこり笑って挨拶するのも特に苦痛にならなかった。
コーヒーの名前を覚えるのは難しかったが、なんとか仕事をこなしていった。
どうせやるなら一生懸命やりたい。

だが、4時を過ぎた頃には、カフェの中はお客さんでいっぱいになり、俺はだんだん余裕がなくなってきた。
ドライブがてらに立ち寄った客の他に、
なぜか北幌高校の女子生徒がたくさんいた。
初めての仕事でいっぱいいっぱいなのに、女子生徒たちが、気軽に声をかけてくるのには、いささか閉口した。
みんなが俺の仕事の邪魔をしているような気持ちになってくる。

めまぐるしく動き回る俺をみながら、マスターは、
「風早くん、キミ、学校で有名なんだってね。
やよいちゃんが言ってたよ。
やよいちゃん、キミがバイトするって宣伝してくれた
みたいだね。
おかげさんで今日はお客さんいっぱいだよ」
と、にっこりと微笑みながらいった。

俺は力なく笑いを返した。
そして壁にもたれかかったまま
ふぅ~と、今日、何回目か分からないため息をついた。







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君に届け大好きな管理人です。仕事の合間に少しづつ、UPしております。 ブログ拍手重視しておりますので、お楽しみ頂ければ、拍手頂けると、日々の励みにさせていただきます。 又、日々の中、努力しながら生み出している作品です。無断転載、複製などは固くお断りいたします。 中傷は困りますがコメント歓迎です。初めての方でも作品の感想などお気軽にどうぞ。

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