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君の瞳に恋してる 4


風早くんにはちょっと、大変なお話です。






携帯のアラームに追い立てられるように、
忙しく風早は家を出た。
昨日、黒沼はすぐ電話をくれたけど、
あんなの、多分ごまかしだよな。
黒沼のことを考えていたせいか、
昨日はなかなか眠りにつくことが出来なかった。
そのせいなのか、今日はもう寝坊した。
今からだと遅刻ギリギリだな、焦りながら腕時計を見る。

外にでるとぶるっとするほど、朝の空気は冷たかった。
昨日の夜に雨が降ったのか、所々にぬれている場所がある。
もう、いつ雪がふってもおかしくないなあと考えながら、
店の裏に止めてある自転車にまたがって走り出した。
こぎ出した瞬間、タイヤの空気が少しぬけている事に
気が付いた。
でももう今は時間がない。
帰ったら空気をいれなきゃな、と思いながら、
ペダルを一生懸命こぐ。

昨日の黒沼がなんであんな風に逃げたのか、
家に帰っても考えてみたけど、
俺の中で納得のいく答えが出てこなかった。
今日はっきりと黒沼に聞いてみようと、決意しながらさらにペダルをこぎ続ける。

ゆるく左に孤を描いている坂道を下りていった時だった。
いつも通りに通いなれた道を、
いつも通りのスピードで下っていく。

俺は始業時間が迫っているのに気を取られて、
自転車の空気が抜けていることなど、
すっかり忘れてしまっていた。
前日の雨がまだ乾ききっていなかったのだろうか。、
マンホールの上に自転車の前輪が乗った瞬間に、ハンドルがガタガタとぶれて、俺の自転車は制御不能に陥った。
マズイっと思った時には、自転車はバランスを崩してガシャンと音をたてて倒れ、横倒しになったままでそのまま坂道を2-3mくらい滑りおりていった。

坂道の先を一人の女子高生が歩いていた。
すべっていった自転車の後輪が女子生徒の左足首のあたりにぶつかった。

「きゃ!」
いきなりの後ろからの衝撃に、その生徒はバランスを崩して、
足元からすくわれたような格好で倒れた。
俺も自転車と一緒に倒れたけども、幸運なことに、ケガは一切なかった。

「ごめんなさいっ! 大丈夫ですかっ?」
俺は血相を変えて、その女子生徒のところに駆け寄った。
同じ高校の制服を着ていたが、みたことのない顔だった。

「痛ったあ~い。 何すんのよっ? 何? どうしたのっ?」
足首を押さえながら、痛そうに顔をゆがめている。

「ごめんなさいっ! 俺の自転車が倒れて、
後ろからぶつかっちゃったんだ!
本当にゴメンっ! 大丈夫?」

うわ……。俺、なんてことしちゃったんだろう。
自分の不注意でケガをさせてしまったなんて……
申し訳ない気持ちがいっぱいで胸がつぶれそうになった。

「大丈夫じゃないわよ! すっ転んだじゃんよっ!」
怒りに満ちた、不愉快そうな、ムッとした声が帰ってきた。

「本当にすみませんっ!
実は、自転車の空気がちょっとぬけてたみたいで……。、
多分、そのせいでスリップしたんだと思う。
……ホントに! ホントに、申し訳ありませんでした!」
そういって、深く頭をさげた。

その女子生徒はふぅーとため息をつきながら、ジロリと意志の強そうな大きな瞳で座ったまま、風早の顔を睨みつけた。

「あんたねー。 どこの世界に自転車の空気抜けたままのる奴がいんのよっ! このまぬけっ!」

心臓をえぐるような言葉を浴びせられて、
「はいっ!ホントにすみませんっ」と
俺はひたすら頭をさげて何回も謝り続けた。

いさぎよく頭をさげ続ける風早の態度に、女子生徒の不愉快な顔つきが少しづつだが、やわらいでいった。

「全く……。びっくりするよねえ! 
もう、やめてよね。……アイタタタ!」
女子生徒はゆっくりと立ち上がろうとして左足に力をいれた瞬間、痛みを感じたのか、またしゃがみこんでしまった。

「あ! 大丈夫?? 本当にゴメン。 もし骨とかに異常あったら大変だから無理しないで。 家ってこの近く?」

「あー、ちょっと距離ある。あたしもいつも自転車なんだけど、
昨日雨ふったみたいだから、今日は歩いてきたんだ」

「俺んちもここからだとちょっと遠くて、ここからなら学校のほうが近いね。学校の保健室に行こう」

「あの、俺、2年D組。風早翔太です」

「あー、もういーよ。大丈夫だから。
あ、あたし、3年A組、橘やよい」
女子生徒は痛みを感じているのか、さっきの怒りの様子は見えずに力の抜けた声をだした。

一人で立ち上がれない彼女に、俺は肩を貸した。
やっと片足で立ちあがり、ヒョコヒョコとびっこを引く痛ましい様子を見て、今度は心配で胸がいっぱいになった。

いくら時間がなかったとはいえ、
なんで自転車の空気くらい入れなかったんだろう……
今更悔やんでも仕方のないこととはいえ、
どうしようもない自己嫌悪におそわれる。

「えと、橘さん」

「やよいでいーわよ」
もう風早のことを怒っている様子はみられなかった。
そんな女子生徒の様子に少しほっとしながら、風早は自分の自転車に乗せようとする。

「じゃあ、やよいさん。 
自転車の後ろに座って俺につかまってもらえる? 
学校くらいまでなら、自転車も大丈夫だと思うから。
俺、前に座るけど、自転車こがないで、足ついたままいくよ。
それと、悪いけど俺がのらないとやよいさんのつかまる場所ないからさ」

そういって橘を後ろに座らせて自分は前に座った。
だが、ペダルをこぐのではなく、
注意深く足で地面を蹴りながら進む。

橘さん、足、大丈夫かな……。
なるべく早く保険室に連れて行かないと。

後ろに乗せている彼女のことを気遣いながら、
前をしっかり向いて、必死で地面をけり続けた。









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君に届け大好きな管理人です。仕事の合間に少しづつ、UPしております。 ブログ拍手重視しておりますので、お楽しみ頂ければ、拍手頂けると、日々の励みにさせていただきます。 又、日々の中、努力しながら生み出している作品です。無断転載、複製などは固くお断りいたします。 中傷は困りますがコメント歓迎です。初めての方でも作品の感想などお気軽にどうぞ。

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