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迷宮 12 (完)


迷宮、とっても長くなってしまいました。稚拙な文章にお付き合いありがとうございました。
本当に、本当に心からお礼を申し上げます。
次はもうちょっと軽いものにしたいなあと思っています。
最近仕事が少し忙しいので、多分5月中のUPはないと思います。
新作、構想中ですので、またお時間ありましたらぜひお立ち寄りください。









心地よかった川沿いの風が、だんだん冷たさを含んできた。
俺と黒沼がいつも帰り道に腰かけるベンチも、
今日はなんだかひんやりとしている。
まわりの草が枯れはじめたせいか、
あちらこちらに冬の息吹きが感じられるようになってきた。

昨日の夜、風早は爽子にメールを打った。

「話がしたいんだ。明日、一緒に帰ろう」


そして今日、一緒に帰った俺たちはいつものベンチに一緒に座っている。
心の奥では村岡のことばが、今でも俺の中でくすぶり続けている。
でも今日は楽しい気分を味わいながら、余裕をもって黒沼と話がしたいと思った。

「黒沼、今度の日曜日って空いてる?
また、どこか行こうか?」

「うんっ。大丈夫。わ~。すごーい」
喜んで首を縦にふっている。

「どこか、行きたいところある?」
うれしそうな黒沼をみて、俺も口もとがほころぶ。

「……風早くんと、一緒に出かけれられるだけで、嬉しいよ」
ほんのりと頬を赤らめて黒沼は答えた。

うっ! かッカワイイ……!
黒沼、かわいすぎるよ。大丈夫か! そのかわいさ!
心臓を鷲掴みにされた気分だ。
そんな黒沼の表情を見ると、胸の中に愛しさがあふれてくる。

「どこでもいいんだ、黒沼の行きたいところいってよ。
俺、連れて行ってあげたい」

「うーんと、えーと、……ちょっと遠くてもいいかな?」

「え、いーよ、いーよ。どこ?」

「動物園!」
黒沼が期待に満ちた明るい表情で、うれしそうに答えた。

「アハハッ! いいよ、動物園行こう」

日曜日に二人で出掛けるなんてひさびさだ。
うれしい楽しみが一つできた。今から日曜日が待ち遠しい。
旭川にある動物園はここから少し離れている。
俺たちはベンチに座りながら、動物園の思い出の話しをした。
俺も、小さい頃、龍や千鶴達、小学校の友達と一緒に
行った事があった。

「そういえば、吉田が動物園でモルモット抱っこした時、
Tシャツにおしっこかけられてさ、龍が自分のシャツと
取り替えてやった事があったよ」
俺は小さい頃の記憶を思いだして、くすっと笑った。

「モルモット? 私も抱っこしたいな。
そういえば、村岡くんのおうち……モルモット? ハムスターかな? 妹さんが飼ってるの。ちっちゃくてすごくかわいいかったな」

黒沼の口から村岡の話しが出た為に、
嫌でも村岡の言葉が思い出された。
今の楽しい雰囲気を壊したくはないと思ったが、今、目の前にある、心のわだかまりを取り除かないと、日曜日に心から楽しめないと思った。
俺はずっと気になっていた村岡の話しを切り出した。

「……あのさ、村岡んちに行った時、
村岡の部屋に入ったって聞いたけど……?」

「え! 村岡くんに聞いたの?」
動揺した様子で答えながら、黒沼はたちまちに顔を赤くした。

え……?。ちょっと待てよ…
なんでそんなに赤くなるんだ。
村岡、何もなかったっていってたよな。
俺は少し焦りを感じて、さらに黒沼を問い詰める。

「ホント……なんだね。。でも、何かあった?」

「あ、あの私、なんか勘違いしちゃって。
すごく恥ずかしい勘違いで、
村岡君には申し訳なかったんだけど……」(//////)
赤面のまま、小さな声で答えた。

「勘違い? え? 勘違いって何?」
俺は考え込んだが分からない。
村岡からは何も聞いてない。勘違いって何だ?

「いや、あの村岡くんは、全然そんなつもりなかったと思うんだけど……多分私の思い過ごしだと思うんだけど…」

「思い過ごし? ゴメン、俺、
何の事かよく分からないんだけど…」

「いや、あの…」
言いづらい事なのか、赤くなったまま下を向いている。

「黒沼! 何、気になるよ。ちゃんと教えて!」
俺はいい加減じれったくなって言った。

「わ、私、勘違いしちゃって。村岡くんが私に、き……」
ためらいがちに一言ずつ話す。

「き?」
何だ? 一体何なんだよ?

「き、キスされるかと思っちゃって……」
爽子はやっとの思いでそこまで言うと、
「きゃ」っといって
恥ずかしさのあまりか両手で顔を隠した。
「……スッゴい思い上がりだよね。私、恥ずかしい…!」

あいつ……!何もなかったっていったじゃんか!
多分、本当に村岡はキスしてもいいと思ったに違いない。
あのヤロー!!
「……もちろ…ん、何も、なかったん、だよ……ね」
体の内側から、怒りと嫉妬の感情が突き上げてくるのを必死に抑える。

「あ、うん、私の勘違いだったので。何も、なかったよ」

「あのさ……、黒沼さ、
男の部屋に入るってどういう意味があるか分かってる?」
本当は村岡に対する怒りと嫉妬で体中が覆い尽くされそうなのに、冷静さを装いながら、黒沼に問いただした。
村岡が黒沼にキスしようとしたなんて聞いて、平気でいられるわけない。

「え? 」

「……男の部屋に一人で入るっていう意味っ!!」
俺は思いっきり、足元にあった石を
座ったままの姿勢から川に向かって蹴飛ばす。

「え? えーと? 意味? ……なんだろう?」
突然の俺の質問に、びっくりしたかのように黒沼は答えを探している。

俺の心のいら立ちが、落ち着くことなく増していく。
俺は、黒沼が答えるのを待ち切れずに、声を荒げた。

「黒沼! 村岡に何かされたらどうすんの?
多分、キスの事は黒沼の勘違いじゃないよ。
そんな風に一人で男の部屋に行くなんて、
危ないって分かってる?
……この前も話したけど、黒沼が、自分の彼女が男の部屋に
一人でいったなんて聞いたら、俺、我慢できないよっ!」

本当に自分をおさえられなくてもどかしい。
確かに黒沼が無防備なのは、今に始まった事じゃない。
でも、誰か他の男の前で、それをさらけ出すなんて考えてなかった。
いや、考えたくなかったのかもしれない。
俺以外の男の前で、そんなに無防備になってほしくない。

「風早くん? あの……風早くんが怒ってるのって、
それって村岡くんの部屋に行ったからだよね。
プリント持って行ったから怒ってるんだよね。
私、そんなにいけない事、しちゃったかな?
でも、お隣だし、先生にも頼まれたし……」
俺の怒りの意味を分かっていない黒沼は、
真剣に、そして少し不安そうに俺に確認する。

「そうじゃなくてっ!! 
そんなの、家の人にでも渡して帰ってくればいいじゃん!
俺が嫌なのは、村岡の部屋で、黒沼が村岡と二人っきりっだったってことだよ!」

なかなか黒沼がわかってくれないのと、
自分の中から湧き出す嫉妬でイライラがどんどん募っていく。
つとめて冷静に話そうと昨日決意したのに、そんなものは、
いつの間にか空の彼方に飛び去っていた。
……やっぱり、俺はまだまだ大人にはなれそうにない。

「あの…、村岡くんにもいわれたけど、
そんなに男の子の部屋にいくっていけないのかな?
でも真田くんのお部屋にもいった事あったし、風早くんのお部屋にもお邪魔したよね?」

「……だから、いいんだよっ! 俺の部屋は! 
彼氏なんだからっ!」 (//////)
俺の意図を全然理解してくれない黒沼。
自分で自分の事を彼氏なんていったせいか、
恥ずかしさに今度は俺の顔が赤くなってしまった。

「そっかあ。か、彼氏……の部屋はいいんだね、彼氏は」

何を勘違いしているのか、黒沼は彼氏という言葉に反応して
また、頬をそめている。
……違うんだよ。黒沼。考える必要があるのは、
そこじゃないんだ。
いま、俺が彼氏だって意味を考える必要はないよ!
そんな事よりも他の男の部屋に入るのはダメって意味、
その意味を考えてよ。

「あの、風早くん、ちなみに彼氏の部屋ならいいっていうのはどうしてかな?」

「----っ!」
黒沼の予想外の質問に今度は俺が答えにつまった。
怒りが急速に焦りに変わっていくのを感じる。

「……そ、それは……」

もう、なんていえばいいんだ?
俺も男なんだぞ。黒沼には、何ていえば分かってもらえる?
大体、黒沼は男に対して無防備すぎるんだよ。
この前、キャンプに行った時だって、俺と二人の部屋なのに、平気な顔してるし。
村岡の部屋に入る事だって何も考えていない。

でも、これって俺が教えていい聞かせないといけない?
俺が話す事で、風早くんは安心!
……なんて思われたら嫌だ。
それに、そんな事いうなんてスケベ!
……と思われるのも嫌だ。

いいか、落ちつけよ。俺、とにかく落ち着くんだ。
呼吸を整えるために、大きく息を吸って、はいた。

「あのね。黒沼」

「ハイっ!!」
知らない何かを教えてもらえるという期待感いっぱいの瞳でじっと見つめられる。

「うっ……。いや、だから、その、二人っきりでいるって事は、
何かされてもおかしくないって訳で、
男は大体そういうことを、考え……てる」 (//////)
恥ずかしさと焦りがさらに大きくなってきた。
体中の血液が顔に集まっていくような気がする。

「だから、つまり、あの、二人で密室にいると、
男だって、そういう気持ちに……なるんだ」

「そういうこと? そういう気持ち?」
黒沼は不思議そうに首をかしげている。

……これ以上言葉で説明できないよっ!
俺は恥ずかしさに耐えられなくなってきた。
これって俺が、なんか黒沼に言い訳してるみたいだ。
自分のやましい事を言いつくろっているみたいだ。
……なんで、こうなる?
俺は最初、すごく嫌で頭にきてたのに、
なんで今は、俺が焦ってるんだろう?

「そういうこと? そういう気持ち……ってなんだろう?」
黒沼は全然俺の言いたい事に気がつかない。

「いや、だから、えーと、つまり、キスとか 
色々な事をしたいわけで、男はそういうのが、
どんどん、とまらなく、なるよ」(//////)
しどろもどろになりながら苦し紛れに言葉をつなぐ。

俺は思わず、頭を抱え込んだ。
あーー! もう、俺、何いってんだ……
なんでこんなに焦らないといけないんだっ?
焦るハズなのは、知らずとはいえ男の部屋に入った黒沼だろっ。
どうして俺がこんなにうろたえなきゃなんないんだ?
だんだんと、体中から変な汗が出てくる。
寒さなんて気にならない程に顔が熱くなってきた。

「そっか。そうだったんだ!」
急に黒沼が閃いたようにいった。

「男の子の部屋に入って、しかも二人でいるってことは、キスされてもしょうがないって事だよね。
部屋の中だと男の子がキスしたい気持ちになっちゃうって意味だよね。
あ、じゃあ、じゃあやっぱり私、あの時、村岡くんに
キスされそうになってたのかな?
だから、村岡くんもキスできなかったから怒ってたのかな?」

そんなの俺に聞かれても、うん、なんて言える訳がない。
村岡がキスしようとしてたなんて、言いたくもない。
俺のいいたい事は、多分伝わっていないと思うけど、
黒沼は一人で考え込み、うんうんと納得している。

もうこれ以上はどうしたらいいか、本当にわかんない……
確かにそうなんだけど、でもそれだけじゃないんだよ。
それだけじゃないとこが大事なんだよ、黒沼! 
……頼むよ。

がっくりするやらほっとするやらで、
体中の力が一気に抜け出てしまったような気がする。
一体、黒沼にどういえば分かってもらえるんだろう。
もしかして、黒沼が理解しない限り、俺たちの関係も進めないんじゃ……?

なんだか、俺はひどく憂鬱になってきた。
ゴールのみえない道をいつまでも
全速力で走り続けている気分だ。
あきらめとむなしさが俺の心にだんだんと広がっていく。

まるで出口のない迷宮の中に取り残されてしまったような気がした。









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