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迷宮 7




やっと7番目のお話になりました。
ここまでおつきあい、ありがとうございます。






みんなでカラオケに来たというのに、
風早の表情はさえなかった。
爽子と一緒に帰ったのは火曜日だった。
あれからもう幾日もたった。


……あれから、黒沼と話していない。

いつもなら、みんなで盛り上がるカラオケにも、
風早は、今ひとつ、乗り切れずにいた。

……今日は、村岡のところにプリント届けろって
ピンに言われてた。
なんだろう。俺、別に悪いことしているわけじゃないのに、
あんまり、黒沼の顔を見る事ができずにいる。


「おはよう、風早くん」
黒沼はいつも優しい笑顔で挨拶してくれる。
なのに、俺はここ何日かは、
「おはよう」
というだけで、すぐに目をそらしてしまい、
笑顔を返せないでいた。


なんでだろう。
なんだか、後ろめたいような気持ちが、
この前黒沼と話した後から、
ずうっと続いている。

それは、彼女に応援してやるって、協力してやるって
いえなかったからかもしれない。
でも、思ってもいない事はいえないし、
そんな事、いいたくもない。
今だって、村岡の事に限っては、
黒沼の事、応援してやる気なんてさらさらない。

でも、だからといって、
このまま、黒沼の顔を真っすぐに、
見れないのは嫌だ……。
話しづらいのも、嫌だ。
こんな気持ちをずっと抱えているのも嫌だ。

……自分の気持ちを正直にいってみるか?

……思っている事を打ち明けてみるか?

黒沼が他の男の事を考えたり、助けてやるのが嫌だなんて、
そんな風に思っている俺のエゴを打ち明けたら、
彼女はどう思うだろうか……。
どう、受けとめるだろうか……


「か~ぜはや! 今度、風早の番だよー」
いつも陽気なジョーが、隣に座って、肩を組んできた。

「オッケー、オッケー。何いれよっかな」
はっと思いだしたように、慌てて曲を決める。

「風早、昨日は来なかったけどさー。
昨日は珍しいヤツが一緒だったんだぜ。
女子も来てくれたんだけどさ。なんと、村岡と
一緒にカラオケしたんだよ~」

「村岡? へえ……。そうだったんだ…」
確かに珍しい……。
あいつは今まで、カラオケとかそういうのに
来た事あったかな?

「まあ、女子は村岡目当てだったみたいだけどさ。
それがどーもさっ。貞子が女子に村岡を誘って行ってくれって、
頼んでたみたいだぜ~」

「えっ。黒沼がっ? それ、ホント?」

「ホント、ホント。
最初はイマイチなノリだったけど、最後のほうは
普通に女子とも話してたぜ。
村岡くると女子が喜んで来るからさ~。
今度からは、村岡も誘おうぜっ!」

ジョーはその後も村岡がどーしたとか、
女子の一人と、メルアド交換できたとか、
色々しゃべっていたけど、俺の耳には
ちっとも入らなかった。

黒沼が、誘ってって頼んだ……。
俺の思考はその部分だけに釘付けされてしまった。

黒沼、……やっぱり、やっぱり、村岡の事、気にかけてるんだ。
……だよなあ。気になるっていってたもんな。
一人でいる村岡が気になるから、
自分にできる事、やってあげたいって話してたもんな。

ふうっっと長いため息をついた。
分かっていたとはいえ、……俺、思った以上にショック受けてる。
心が重苦しく、波立っている。
胸の奥のほうが、ズキンズキンと痛みだしている。

どうしよう……。俺、すっっごい嫌だ!!

黒沼が、村岡の事、気にするの……。すっごいすっごい嫌だ!
とてもっ……耐えられるもんじゃないっ!!
まじで、我慢できないよっ!!
俺の独占欲なんだけど、
すっごい子供っぽいワガママって分かってるけど、
こんな気持ちじゃとてもいらんない。


……やっぱり、俺、黒沼に自分の気持ちを、ちゃんと話そう。
思っている事をちゃんと話そう。
もう、カッコつけてなんか、いらんない。

……カッコ悪くてもいいよ、もお。
とにかく、黒沼に、俺の気持ちを、聞いてもらいたい。
このまま、モヤモヤする気持ちを抱えたままじゃ、
俺自身、とても耐えられない。

笑われるかもしれない。
軽蔑されて、嫌がられるかもしれない。
俺がそんな事考えているなんて
彼女はまるで思ってないから。
でもそんな俺の気持ちを聞いて
どうするか決めるのは、俺じゃない、黒沼だ。

すぐにでも、黒沼に気持ちを伝えようかと
思ったが、俺には少し時間が必要だと思った。
そう、少し、自分の頭を冷やす必要がある。

ちょうど週末だったので、自宅にいる間は、
なるべくじっとしていないで、体を動かすようにしていた。
と、いうか、俺はじっとしていられなかった。
家の手伝いがあれば、真っ先にやった。
とにかく、体を動かしていたかった。

……余計な事を考えたくなかった。
黒沼と村岡の事を考えたくなかった。
何かをしていないと、自分の気持ちが、
どんどん暗いほうに向けて沈んでいくような気がした。

黒沼に気持ちを伝えようと、
勇気をもって決めた気持ちが、
崩れ落ちそうになるのも怖かった。
……とにかく、俺は、月曜日が待ち遠しかった。


そしてやっときた月曜日、授業がやたらと長く感じられた。
だが、やがて待ち遠しかった下校時刻になり、
チャイムが鳴り響いたと同時に、
俺は、立ちあがって、黒沼に声をかけた。

「黒沼っ! 今日一緒に帰れる?」
「あっ。風早くん、うん、大丈夫」

黒沼はいつものような笑顔で答えてくれた。
俺も、今日は笑顔を返す事ができた。

矢野や吉田も一緒に階段を下りていく。
昇降口まできて、下駄箱の前で靴に履き替えていた時、
ベンチに村岡が座っているのに気がついた。

俺たちが歩いてきたのをみて、
村岡は、立ちあがってこっちに近づいてきた。

俺は、無意識に黒沼の隣に並んだ。






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