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迷宮 6




6番目です。チョイ長です。








「おっ、おまえ何やってんだ???」
村岡は慌ててベッドから起き上がって、目をパチクリさせた

目の前にあのこけし女、黒沼がいる。

「あ、村岡君、起しちゃった?
あのっ。私、プリントと今日のノートを届けに来たの。
そしたら、お母さんが、妹さんのお迎えに出かけるから、
少しついててもらえないかっていわれて。
起こしちゃって、ごめんね」

なぜ、一体どうして、俺の部屋に黒沼がいるんだ?
お袋に頼まれたとか言ったな……
だからって…んなもん、安請け合いしてんじゃあねえよ。
おせっかいにも程があるだろ。
そんなに、俺にかまう必要はない。

俺は状況を把握するのにしばらく、時間がかかった。
だが、次第にいら立ちと残酷な感情がわき起こってきた。


「あのなー。 オマエ、男の部屋に
のこのこ入ってくるなんて、どういう神経してんだよ。
オマエ、あの風早ってやつと付き合ってんだろ?
俺に何されても、文句はいえねえぞ」

怒りをあらわす為に、どんっっと拳で壁をたたいた。
そして立ちあがって壁に両手をついて爽子が動けないよう閉じ込めた。
さわこは何が起きたか分からないような、
不安げな顔をしている。

村岡は爽子の顔を片手でくいっと上に向かせた。
ゆっくりと二人の顔が近づいていく。

「え? きゃあ! むっ村岡くん、
近いっ、近すぎです!!」

爽子が両手で近づいてくる村岡の顔を押し止めた。

「たりめーだろ。キスすんだから」

「え? え~!! きっキス!!
一体どうしてそんな事に??」

「……んだよ、俺とそういう事したいんじゃないのかよ。
勝手に部屋まで上がりこんでくるから、
俺と楽しみたいのかと思ったぜ」

村岡は冷ややかに笑って、冷たい瞳で爽子を見つめている。

そして爽子を見つめながら、今度はさっきより乱暴に
ぐっと両手で爽子の細い腰を引き寄せた。
そして体を密着させたまま爽子のあごを再びグイッと持ち上げた。

「いやっ! やめて!!」
村岡の胸を押し返そうとするが、
がっちりと押さえられてしまっている。
体を動かせない状態で、村岡の顔が近づいてくる。

「止めてっ! やだっ。風早くん、助けて!」

もうダメ! キスされる!と、
思った瞬間、村岡の動きが止まった。

ふっと冷たく笑われて体を離された。

えっ……。
もしかして、からかわれただけ?

脅えながら、不安そうな顔で村岡を見つめた

「おまえ、本当におせっかいだな。
……やめろよ。俺にかまうのはやめろ。
全部余計な事なんだよっ。
お前、風早が好きなんだろ。
あいつ王子っていわれてんだってな。
優しいお姫様は優しい世界で、
優しい王子様と一緒に生きてれば
いいんだよ。
それともあれか? 偽善者か?」

村岡は、苛立ちをぶつけるように一気にまくしたてて、
そして黙り込んだ。

しばらく沈黙が流れた後、
爽子は絞り出すように声をだした。

「偽善者かどうか分からない。
だって私は下心だっていっぱいもってる。
村岡くんが……
なんかさびしそうだったから……」

さっきまでの恐怖でまだ上手く話せない。

「さびしい?」

「俺が?」
村岡が怪訝そうな顔で爽子を見る

「……どういう意味だよ。
どういうつもりでそんな事いうんだよ」
村岡の心に徐々に訳のわからない怒りが湧き出していく。

「お前に俺の何が分かるっていうんだ? え?」
やり場のない、いら立ちに支配されていく。

爽子は緊張した面持ちで話を続ける。

「確かに、私はおせっかいかもしれない。
何かができるかなんて、思い上がりなのかもしれないけど。
けれど、私にも一人で抱え込んで…
色々な事に一人で耐えて…
心の痛みに苦しんだ事があったから。
だから、何かせずにはいられなかった。

もしかしたら、村岡くんもそうじゃないかって
……そんな風に見えたから」

声がふるえる。
どういえば、うまく伝えられる?

「俺が? そんな風だと?」

「私が苦しんだように、
同じように村岡くんも苦しんでいるように、見えた。
すごく、無理しているように見えた。

ほんとはさびしいのに、無理して
一人でいるように見えた。
一人でいると、さみしくても、悲しくても、うれしくても、
ひとりぼっちのままだよね。

でもだれかと一緒だったら、
楽しかったり、笑ったり、
悲しい思いを一緒にすれば、
一緒にいるだけでも、心があったかくなるよね。
……心が、心がとても安心するよね。

そういうあったかい気持ちを、
村岡くんもきっと知ってるんだよね。
私、それは本当に、かけがえのないもの、大事なものだと思う。

なのに村岡くんは、それなのに村岡くんは…
自分からそれを拒否しているように見える」

村岡が眉をひそめる。
だが、そのまま鋭い眼差しでじっと爽子をみつめ、
黙りこんでいた。

「どうして?
どうして自分から避けてるの?

私はみんなと一緒にいたくてたまらなかったよ。
独りきりの世界から抜け出したかったよ。

どうして村岡くんは独りきりの世界にとどまってるの?
……一人が好きなようには、みえないよ。
何かを……、ただ何か、待っているように見える。

私は風早くんに背中を押してもらったの。
自分からは動けなかった。
諦めていた自分に、キッカケをくれたのは風早くんだった。

でも、だからといって、私、
別に風早くんのようになろうとか、思っていない。

ただ、待っているだけでは、何も変わらないという事を、
そこにとどまっているだけでは、変わらないという事を
私は分かったから。
だから、村岡くんの背中を押したいと思った。

村岡くんの止まった世界が
動き出せばいいと、思った……。
何もしないと、ただただ、
時間だけが過ぎていってしまうから……」



俺は黙り込んだまま、黒沼の目をじっとみつめていた。
黒沼は不安そうな目をしながらも、
しっかりと俺の目を見続けている。
その目にの奥には、強い光があるような錯覚すら起きる。

……こいつはウソをついている目じゃない。

こいつの目は、おせっかいとか関係なく、
自分のやりたい事をやっただけ、そういってる。
自分の為に。そして、俺の為に。

そう、多分俺に自分を重ねて、見ていられなかったんだろう。
何かせずには、いられなかったんだろう。

そうだ。俺もこんな目をしてたんだ。
裏切られてしまったけど、友達や、彼女のために
自分のやりたい事をやっていただけなんだ。
あいつらの為にじゃない。自分の為にだ。
ただ、ただ、一緒にいるのが楽しくて……。


ふぅーーと深いため息をついた。


それにしても、俺はコイツの為に、
何かやってあげた訳でも、何でもないのにな。
いくら見ていられなかったとはいえ、ホント、
バカみたいにお人好しだ。
……でも、ほんとに、信じられないくらいに、
純粋な気持ちを持って、こいつは人と接するんだな。

もう一度ため息をつい後、村岡は話をはじめた。
その口調には、先ほどの怒りはみえず、
静かに、淡々とした話し口だった。

「俺、前の学校で、転校が決まった時に、
手のひら返したように、彼女や友達に裏切られたんだよ。
かなり……へこんだ…な。
まあ、オマエには関係ない話だけどな」

村岡は、いやな記憶を思い出したかのように、
つらそうに顔をゆがめた。

「オマエ、ほんとに変わったやつだな。
偽善者かと思ったけど。
オマエは心からそうしたいと思った事を、
自分に正直にやっているだけなんだな」


「……ありがとう」


いつも冷めたような瞳で人を見る、村岡の目が、
優しく爽子を見つめた。
そして、ぽんぽんと優しく爽子の頭をたたきながら、
穏やかな口調で爽子に向かって言った。

「今日はプリントありがとな。助かったよ。
……俺はもう大丈夫だから、お前、もう帰れ」

「あ、ううん。私こそ、風邪なのに、……ごめんなさい。
……村岡くん、お大事に……」

とまどった表情のまま、バタンと、
ドアを閉め黒沼が出て行った。


俺は一人になってから
もう一度ふぅーーと長い溜息をつき、考えこんだ。

……今までに俺の回りには、
なんでも損得で考える奴しかいなかった。
だから、そうでないヤツもいるなんて、考えてもみなかった。
人間だれしも、自分の事ばっかりだろうと思ってた。
そんな奴らとまた、付き合って、
自分がまた傷ついたら嫌だと思ってた。

でも、もしかしたら俺は、
自分を守るために逃げていただけなのか?
もう、自分が傷つきたくなくて、目をそむけていただけなのか?
心の底では、また誰かと共にいる世界を求めてるのに?

黒沼の言うとおり、自分から動かなくては、
誰とも新しい関係は作れない。一度失敗したからって、又同じ事が起きるとは限らないんだ。
俺には、また向かっていく勇気がなかっただけだったんだ……。
楽だから、もう傷つきたくないからって、
本当にほしいものかに背を向けていたのか……。

なんだ、俺も楽なほうにばかり行こうとしてたんじゃないか。
自分が損したくなかっただけじゃんか。
所詮は、俺を裏切ったやつらと、同じ事じゃないか。

そう思ったら、急に笑いがこみあげてきた。
ひとしきり笑った後には、すっきりとした爽快感が残った。

でも、黒沼が俺に気づかせてくれた。
迷い込んでいた俺を導いてくれた。
俺は、自分のやりたいようにしよう。
その結果が、自分の期待していた結果でなくても、
それが自分の為にならない事でも、やりたいようにやろう。

俺は、もう、迷う事は、ないだろう。

あいつが俺だったら…
前の学校の奴らとももっとうまくやれたかもしれないな。

ふとそんな事を考えながら
ベッドに寝転がり、また天井をみつめた。





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