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迷宮 3



3番目のお話です。ちょい長いです。









北幌高校では一か月に二度、日直当番が回ってくる。
席順でまわるために、月曜日は爽子と村岡の当番だった。

「貞子、いいなあ~、村岡くんと当番なんて」
トモやえっこが羨ましそうに爽子にいった。

「えっ! どうして?」
爽子は驚いて目を大きく見開いた。

「貞子、なんとも思わないの~?
彼、すごく雰囲気あってカッコいいよね。
寡黙だけど、そこが大人って感じで」

「そうそう、ちょっと冷たい感じがコワイけどね。
話しかけたら拒否されそうな感じだけど、
日直だったら一緒にやりたい~」


寡黙……? 大人っぽい?
みんなそんな風に思ってるんだ……。
村岡君は確かにあんまりしゃべるほうじゃない。
私が話しかけても、あまり答えない。
でも、みんながキライだからとか、
イヤって訳じゃないようにみえる。

もし、みんながキライなら休み時間とかは
教室から出ていくよね?
一人になれる場所はいくらでもある。
でも、村岡君はそうじゃなくて、教室にいる。
ただ、話さないだけ。みんなの輪に入らないだけ。

きっと一人でいたいわけじゃない…よね?
隣の席になってから気がついたけど、
時々、遠い目をして、どこかをみてる。
何かを考え込んでいる風にも。

私にはそんな村岡君の様子はなんだか、心細そうに見える。
村岡君は誰かとかかわっていたいように見える。
誰かに受けとめてほしそうに見える。

村岡くんの気持ちを知っている訳じゃないけど、
きっとそうじゃないかと、思う。
……だって、私が、長い間そうだったから。

私もクラスのみんなが好きで、教室にいた。
ただ、なかなか話ができなかったけど。
あの頃の私は、風早くんと会う前の私は、
話しかけられるのを待っているだけで
自分から動けなかった。

村岡くんの事が、心細そうにみえるのは、
あの頃の自分と、寂しくて心細かった自分と、
同じように重なって見えてるからかもしれない。

自分一人だけの世界の心細さを、
誰かと関わりあいたいのに出来なかった自分のもどかしさを
知ってるから、きっと彼もそうだと感じる事ができるんだと思う。


爽子と村岡は日直の仕事で
校庭のすみにある、用具室に向かっていた。
明日、行われる保護者対象の進路説明会の準備のために
机やイスを体育館に運ぶのである。

前日から冷たい雨がしとしとと、降り続いていた。
校庭のあちらこちらに、冷たいみずたまりができている。
用具室は普段あまり使わないせいか
薄暗く、あちこちにクモの巣ができていた。

クモが大の苦手な爽子は入るのに躊躇していた。
が、村岡はさっさと部屋に入っていき、
やがてテキパキと机やイスを運びだした。
ドアの前でぐずぐずしている爽子を見て、村岡が声をかけた。

「オイ、どうしたんだよ、早く入れよ」
「ご、ごめんなさい。私、クモがすごく苦手で…」
「ったく、クモくらい、なんだってんだよ」

口では文句をいいつつも、
村岡は爽子の分まで机やイスを運び出してくれた。

「あ、ありがとう、後は体育館まで私が運ぶよ」
「女一人じゃ運べねーよ、いいよ、もう」

村岡くん、口は悪いけど、いい人なんだな。
だって結局全部一人で用具室からだしてくれた。
今だって自分一人で重い机を持って私には軽いイスだけ
運ばせてくれてる。

そんな風にぼんやりと考えながらイスを運んでいると
ずぶりと泥に足をとられた。

「きゃ」

足元を見ると、雨でできたぬかるみに、
ソックスのあたりまでどっぷりはまってしまっていた。

「えっ!ウソ!どうしよう!」

「あーあ、何やってんだよ」
村岡があきれ顔して爽子をみた。

爽子は仕方なく、ぐちゃぐちゃの靴であるいた。
歩くたびに靴の底にたまった泥水がべちゃべちゃと音をたてた。
泥水をたっぷりと吸ったせいか、片方の足だけ重く、
びっこをひいたような歩き方になってしまう。

もう、私ったらドジ! ほんとに、ドジ!
みっともないな。もう……。
足もドロドロで気持ち悪いし、おまけに歩きずらくて…。

村岡は足取りの遅い爽子に、
仕方ないなというような顔をして言った。

「おい、オマエ汚れたほうの靴とソックス脱げよ」
「えっ? でもどうして?」
「いいから、早く脱げよ」

言われた通りに泥だらけの靴とソックスをぬいだ。
ソックスを脱いでみると、思っていたほどは汚れていなかった。

「これ履けよ」
村岡が自分の大きなスニーカーの片方を
ポンと爽子の足元に放り投げた。

「えっ!そんな!いいよ。だって村岡君はどうするの?」
「いいから、履けよ」
「えっ…。でも、私、足も汚いから村岡くんの靴が
汚れちゃうよ!」
「いいから、グズグズいってないで早く履けよ!!」

怒ったような村岡の迫力に圧倒されて、
爽子は村岡のスニーカーに足を通した。

そして、村岡は爽子の泥だらけの靴を自分の手に取った。
やがて、自分も裸足になったかと思うと、
片足だけ靴を履いていない裸足の状態で、
机を抱えて、スタスタと歩いていってしまった。

村岡の片方の裸足の足だけが泥だらけになっていく。
時々、泥に足をとられて、チッっと舌打ちしながらも、
一向に気にしない様子で歩いていく。

「えっ!ちょ、ちょっと村岡くん!」

ぶかぶかの村岡のスニーカーを履いて、追いかける。
だが、片方だけぶかぶかで大きい靴を履いているため
バランスがうまくとれず、歩くのが遅れる。

すれ違う生徒が片足だけ泥だらけ、
しかも裸足の村岡を不思議そうにみる。
女子生徒がクスクスと笑っている。
だが、全く意に介さない様子で、村岡は机を運び続けている。

「かせよ」
足取りの遅い爽子の運んでいたイスも、
結局は村岡が何度か往復して運んでしまった。

「おい、下駄箱のとこに、俺のくつおいとけよ
オマエの靴も置いとくから。」

そう言い残して、
また先にさっさといってしまった。

爽子が下駄箱のところで
上履きに履き替えていると、
水道で足を洗っている村岡がいた。

泥だらけになった足をざーざーと冷たい水で流している。
そして、信じられない事に、爽子の靴までも洗ってあった。

「村岡君、本当に、本当にありがとう。
足、汚しちゃってごめんなさい。
水、冷たいのに私の靴まで洗ってくれて、本当にありがとう」

「別にいいよ。仕事、早く終わらせたかっただけだし
ホラ、とりあえず、これで家まで履けるだろーよ。
あとはしっかり家で洗えよ。」

誰かにこんなに親切にしてもらうなんて、
私、本当に本当にうれしい……。
どうやってありがとうの気持ちを伝えたらいいんだろう。

「……ナニ?」
「い、いや、本当に嬉しかったの。ありがとう」
「……別にたいした事じゃねーだろ。
もう、仕事ないよな。俺、もう帰るからな」

村岡が立ち去った後も爽子はその場にしばらくたっていた。

こんな風に困っている人を助けてくれる人なんだ。
ぶっきらぼうだけど、本当はすっごく、すっごく優しい人なんだ。

自分の事を何も話してくれないし、
あんまりよく村岡君の事を知ってる訳じゃないけど、
でも、こんな風に誰かを助けてくれる人は、
絶対に悪い人じゃない。
ううん、本当はとってもとっても優しい人なんだ。

風早くんが、私の世界を変えてくれたように、
私の世界に色をつけてくれたように、
私にも何か、彼にしてあげられる事があるといいな。
風早くんにも、こんな風に誰かに親切にされて
とっても嬉しかったって話を聞いてもらいたい。

爽子は村岡に対する感謝の気持ちをたくさん抱えて、
温かい気持ちで帰り道を歩いた。





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