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ボーダーライン (2)

こちらの記事は、『君に届け』の二次小説に関する記事です。
原作とは一切、関係ありません。内容も全く異なっております。
記事をお読みになる前に、はじめての方は、「はじめに」を必ず、お読み下さい。
管理人のお話をつくる上でのスタンスが書いてありますのでこちらの趣旨にご了承頂ける方のみ、お読みくださいますよう、お願い申しあげます。




前回の記事にはたくさんの拍手やコメントありがとうございました。
『君に届け』はウブウブでピュアな世界なので、てっきりそういう路線でなければ、あまり受け入れられないだろうと思っていたので、たくさん拍手を頂けて、驚きました。

きっと原作と二次サイトのお話とは、みなさんすっぱり切り替えられてご覧になっているのかなあと、認識を新たにさせられました。
原作で書かれないような部分を埋めていくのが二次なので、どうかなあと不安だったんですが、
お好きな方もいらっしゃるようで、安心して続きを書かせて頂いております。
私自身、こういうお話も結構好きなので、わくわくしながら綴っております。

加えてあまり更新ができないと愚痴めいたことを書いているのに、思いやりのお言葉をたくさん頂けて、本当に心が温まるというか、安心するというか……。

優しいお言葉に甘えるつもりは毛頭ないのですが、何だかほっとした思いで書いております。


お待たせしてしまいました。今回のお話は前回の場面の続きからです。
お楽しみ頂けるとうれしいです。








市電をおりてからロープウェイに乗り継いで、山頂の駅に到着した。
山頂展望台の入口付近には、何かを待つような数人の列ができあがっている。

何だろうと爽子がつま先立ちになって、列の隙間からのぞき見ると、先頭の方では、プロのカメラマンに記念写真を撮影してもらえるカメラ会社の無料の宣伝イベントが行われていた。

「とってもらおっか?」

「いっ、いいの?」

「いーに決まってる! 並ぼう」

とんと軽く背中を押された。
あいにくカメラはもっていなかったけれど、携帯でもよいと言われて、せっかくの機会だから列に並ぶ。予想していたほどの待ち時間はかからず、すいすいと順番が回り、日付の入ったプレートをもって立つように促された。

「ちゃ、ちゃんと写るかな……?」

「写るよ!」

「これも……思い出になるのかな?」

「なるよ。絶対に思い出にしよう」

二人でこんな風に撮影してもらうなんていつ以来だろう。
写真に撮られるのは、何回経験しても慣れなくって、緊張した面持ちで風早と二人で並び立った。ファインダー越しに覗くカメラマンは、陽気な声で注文をしてくる。

「彼氏はそこから、動かないで。彼女さんはもうちょっと彼氏にくっついて! 
彼女さん、もうちょっとよって! ああ、もうちょっとだよ」

そんなに「もうちょっと」と連呼されましてもっ!!
自分では十分に肩をよせていたつもりだったので、人様の目の前でそんなにベッタリくっついていいものかと、難易度の高い注文におたおたしてしてしまった。
一体どのくらい近づけばOKをもらえるのか、判断に苦しむ。
まごついている爽子を見て、隣にたつ風早は、焦れったそうに強く肩を引き寄せた。

「ほらっ、仲良しだよ」

聞き覚えのある風早の台詞に、頭がフラッシュバックした。
川原でマルちゃんに警戒されていた時、風早くんは何のためらいもなく、やっぱりこんな風に体を近づけてきた。
あの時と同じで、風早くんには躊躇している様子はないのに、写真のポーズだけでいちいち反応してしまうなんて、考えすぎの自分は何だか恥ずかしい。
それに、あの時と今では、二人の関係も、距離感も、全然違うはずなのに、一歩の距離に戸惑いを抱くなんて自分でもあきれてしまう。
嫌だなんて気持ちは、まるでないのに      

「どうぞ、きれいに撮れてますよー。あんまり離れていると、ケンカしてる最中みたいに写っちゃうからねー」

出来上がった写真を見ると、風早はカメラに向かって自然な笑顔をみせ、爽子のほうは、ちょっと驚きを含んだ表情をしている。
それでも風早に肩を抱かれているせいか、普通に仲の良い恋人同士に見える。
こうして一場面だけ切り取った写真で見てみると、たしかに二人の距離が不自然に空いていたら、何かよそよそしい雰囲気にみえるかもしれない。

もしあのまま何もいわれなかったら、今手元にある写真にはどんな二人が写っていたのかなと、妙に気になった。
やっぱり他人行儀に、もしかすると友人同士のように、見えるのだろうか? 
それなら本来の二人の姿は      どちらに近い?

高校の時から、変わらずに続いている風早とのつき合いは、これからも続くはずに違いないと、何も疑問を抱いたことはない。
風早を好きだと思う爽子の気持ちは、決して変わらないときっぱりといえる。
ずっとずっとこのまま変わらない。
爽子が風早に抱く気持ちも、風早から惜しみなく与えられる笑顔も、
      そして二人の距離も。

「良く撮れてるね」と隣で軽く微笑む風早は、写真を見てどう思っているのかと、一抹の不安を抱く。ケンカしてるみたいなどと、思いもよらない言葉を投げかけられたせいかもしれない。


「一枚しかないけど、黒沼、欲しい?」

「ほっ、欲しい! 絶対に欲しい!」

「うーん、困った……俺も欲しい」


てっきり「いいよ」と言われると思っていたので、風早の欲しいと言う言葉に仰天した。
風早はいつもの笑顔だからいいが、爽子のほうは、はっきりいって微妙だと自分でも思う。それだけでも恥なのに、写真を見られる度に、さらに風早に爽子の変な緊張っぷりを思い出されては、恥ずかしくてたまらない。

「絶対、絶対にっ……私がもらいたいの! だって風早くんは、すごくいい笑顔なのに、私ってば変な顔してるし、それにこれは、くっつかれて驚いてるみたいで…………いやじゃないのに」

口にだしているうちに、段々自分の台詞が恥ずかしくなってきた。
これ以上続けると、墓穴がさらに広がってしまうように思えて、口をつぐんだ。
初めは珍しく押しの強い爽子に風早は少し面食らっていたが、爽子の話を聞いているうちに、照れたように視線を落とした。
「いいよ」と小さく頷いて、写真を差し出す風早の頬は少し赤い。


「行こうか」といわれて歩き出したその時、ちょうど目の前を爽子たちと同年代くらいのカップルが通り過ぎていき、女性のほうに目が吸い寄せられた。
彼女のほうから、彼氏らしき男性に腕を絡ませてくったりともたれかかるようにして、歩いていたからだ。
二人の関係を全く知らない爽子の目から見ても、とても仲のよい恋人同士に見える。
なるほど、好きな相手とはこのくらいの距離で、自分のバランスの危ういくらいまでギリギリ相手にもたれかかるようにすればよいのかと、ふんふんと頷いた。

「かっ、風早くん」

「ん?」と風早の立ち止まった時に、自分の両腕を風早の腕に巻き付けるように、ぎゅうっと抱きしめてもたれかかる。
瞬間、風早の体は固く強張ったように思え、図々しかったかな……?と心配になって風早を見上げた。

「くっ、黒沼……? どうしたの……寒くなった?」

爽子を気遣いながらも、うわずった声を発する風早の態度は、なぜか固い。
きっと必要以上に力をいれすぎてしまった不自然なこのやり方のせいだと思い直して、初めてさわるもののように、慎重に片方の腕だけをもう一度絡ませる。
さっきの恋人同士のようにはできないけれど……思いながらもなるべく距離をつめるように意識して並んだ。


「……爽子?」

「はっ、はい!」

「そんなに驚かないで。ちょっと呼んでみたかっただけだよ」


突然、顔の赤くなるような呼びかけをされて、思わずシャキンと直立してしまった。
爽子の反応を見越していたようで、風早は何だか楽しそうに笑っている。

「黒沼もいい加減俺のこと、名前で呼んでくれると……うれしいかな。
いやっ、まあ、無理にとはいわないけど」

「しょ、しょうたくん?」

名前をつぶやいただけなのに、頬が急速に熱をおびた。
要望にお答えしたいのはやまやまなのだけれども、きっと呼びかけるたびに赤くなってどぎまぎしてしまう。
いくら何でも心臓に悪すぎるのでは……と深呼吸をしながら胸を押さえた。

「あーっ! やっぱ照れんね。呼ぶのも、呼ばれるのも。
俺ももうちょっと、自然にいえるように練習しよっと」

「わ、私も!」

二人して焦ったように顔を見合わせてから、互いに頬を染めている様子に気づいて軽い笑みがこぼれた。
慣れないことに緊張してしまうのは恥ずかしいけれども、それでも大好きな人と一緒に受け止めるこういうどきどきは、何だかとってもうれしい。  

「……なんか、俺、結構恥ずかしいかも……」

「私もなんか、すごく恥ずかしいです……」

「あんまり笑わないで」といいながら風早も笑う。二人で互いの照れを隠すように、くすくすと笑い合った。



エレベーターにのって屋上の展望台に上がると、辺りはもう暗くなっていた。
山の頂きに位置するために、余計な音は一切聞こえず、冷たく澄みきった空気が、遠くの道路を流れるように走る車の音だけを運んでくる。
山のにおいのする空気を胸一杯に吸い込んで、白い息をついた。

地上を見下ろすとあざやかに彩られた光の粒子たちが、競うように次々と生まれている。暗い夜空はすでに目の前にまで落ちてきており、地上と空のさかいめをを急速に消しこんでいる。
空と地上の両方で生まれてきた光は、同じタイミングで、それぞれ呼応するように輝きはじめていた。

「きれいに見えるようになってきたな」と風早は隣で声を漏らした。
      

星空の落ちてくる感覚にとらわれてしまい、魅入られたように声をだすのも忘れ、地上と空を眺め続ける。
明るさのちがうたくさんの橙色の光を目にした時、不意に以前に二人で見た夜景が、記憶の中から浮かび上がってきた。
確か、初めて風早と二人で見た、北幌の夜景もこんな風にオレンジの光が多かった。

      大学を受ける)
その言葉を風早から聞いたのは、あの時が一番最初だった。
初めてのホワイトデーに爽子はさんざん浮かれていたけれども、
風早の夢を語るような生き生きとした表情は、鮮明に記憶の中に残っている。
これから進む道を真っ直ぐに見つめる、活気に満ちた瞳。
決意のあふれる印象的な表情。
今の風早は、どんな顔をしているのだろうかとそっと顔をあげた時に、その横顔におかしな胸の動悸を覚えた。

黒い画用紙の上に、鮮やかな光の粒をばらまいたような夜景をみているはずなのに、モノクロームな写真を眺めているかのように、まるで色を感じさせない空虚な目。
視線の行く先は、まばゆい地上ではないが、空の星を見上げているのでもない。
何も存在しない空っぽの空間を見ているように、その瞳からは、何の感情も読み取れない。      定まらない視線。

何を考えているんだろう。
あの時とはまるで違う表情に、嫌な感じに胸がざわついた。
隣にいるはずなのに、なぜかどうしようもないくらいの距離を感じる。
風早の心はどこか遠くを彷徨っていて、ここにはない、と。

「風早くん……ちょっとだけ、ちょっとの間だけ、こうしててもいい?」

とっさに風早に、腕を絡ませて、隙間のないように体をピタリとくっつけた。
自分でも、今日はどうしてこんなに積極的に振る舞えるのかは分からない。
いつもなら羞恥心に躊躇してしまうけれども、今は、嫌な不安のほうが勝っていた。
      いっしょにいるはずなのに、遠いところにいるようで。

知らない世界に置き去りにされたかのような、正体の見えない不安を消したくて、風早の温かみを直接感じ取りたかった。肩から伝わってくる体温が心地良い。

「黒沼? やっぱり寒い? 中に入ろうか?」

「ううん、寒くない、もう少しだけ」

写真を撮る時は躊躇なく爽子を引きよせたはずの風早も、爽子自身にアプローチされると戸惑ってしまうようだった。
はじめは、照れた笑いをしていたが、今はためらうように瞳の奥がわずかに揺らいでいる。なかなか離れない爽子の様子に、やがて複雑そうに表情をゆがめた。

「……さっき、三浦に聞かれたっていったよね? 『変わりないか?』って。
それで思ったけど、「変わらない」っていう言葉は色々な意味があるよね。人の心は変わりやすいっていうくらいだから、うれしく感じることではあるけれど……変化がないのは、ある意味では切なくも思える」

言葉の意味を理解できずに、顔をあげると、風早はかすかに笑っていた。

「え……? どういう意味?」

「あ」という顔をして、風早は何かいいたいような、言いたくないような顔をしたけれども、結局何も言わなかった。

「うん……わからなくていいよ。わかったら、困るんだから」

「風早くん、あの      

「何でもないよ。つまらない独り言だから」

爽子の言葉を遮るように、風早は自分の言葉を重ねた。
しばらくそのままに爽子を見つめていたが、やがて目を細めてゆっくりと視線を落としこむ。うやむやにごまかされた感じに、居心地の悪い緊張感に取り巻かれたように思えて、胸に引っかかるような言葉の意味を確かめたかった。
けれども、幾度も聞くことで風早は気分を害するのではないかとか、しつこいだろうかとか、ネガティブな思考に走ってしまう。
爽子が頭の中で右往左往しているうちに、風早はポケットを探りだした。

「あ、ちょっとごめん」

ポケットの携帯が着信を告げたようだった。
「武藤か……」と表示を確認しながら、風早は話しはじめる。
相手の高い声が、携帯から漏れ聞こえてきた。

「……ああ、うん、いいよ……うん、そうだよ、本当だって。今度、武藤にも紹介するよ」

「武藤」という名前は、爽子には聞き覚えはなかった。
大学の新しい友人なのだろうか。
会話の内容は分からないが、相手の返答に風早は声をたてて楽しそうに笑っている。

「うん、了解。それじゃ」

「か……風早くん」

「ん?」

「な……何でもない」

電話の相手は一体誰なのかと気になったけれども、それよりもさっきの風早の言葉が、頭の中に何度もくり返し再生されて、なかなか振り払えない。
いつもなら、また今度折りをみて聞いてみようと、すぐに切り替えられるのに、なぜだろう? 今日は無性に心がざわめいている。
      うつろで乾いた印象の瞳。不可解な言葉。

小さな棘も、放っておくと知らず知らずのうちに大きな痛みに変わることもあると、経験から学んでいた。
けれども、今までにあんな風に言葉を濁された覚えはなかったせいか、風早に聞いてもうまくかわされてしまうように思えてならない。
風早くんはいつだって自分の気持ちを、正直に伝えてくれている。
でもあの言葉は     

「風早くん……」

もう一度と呼びかけると「なに?」と優しい瞳を返してくれたので、思い切って風早の手をとった。一瞬、風早は驚いたように瞬きをくり返したが、つないだままの手を自分のコートのポケットにしまいこむ。
大きなポケットの中で、ゆるやかに爽子の手を包んでから、ぎゅっと握る。

「黒沼……今日はどうしたの? 何だかやけに積極的だから、俺……ちょっと困るかも」

「あっ……! ごめんなさい」

慌ててポケットから手を引き抜こうとした時に、強く引き止められた。

「違う、違う、うれしすぎて困っちゃうってことだよ」

いつも通りの笑顔に、ほっと胸をなでおろす。
風早の手から伝わってくる心地よさは指先まで満ちて、安心感に変わる。
いつもと同じ安心感で包まれているうちに、あまり深く突き詰めて考えすぎるのは良くない、と自分に言い聞かせた。
何も聞かなくても、大丈夫。いつでも風早は手を差し伸べてくれるはずだから、と。



自宅に帰りついた後、バッグを開けて見ると、風早とみていた旅行のパンフレットを見つけた。一緒に見ていたページをもう一度開いてから、捨てるかどうかちょっと迷った末に、雑誌のたばの上に重ねる。
別れ際の風早の、いつも変わらない笑顔がよぎった刹那、軽いため息をもらした。

旅行の話の時には、本当はなんと言えばよかったのだろう。
それに、風早のあのことばの意味は?

『わからなくっていいよ』と目を細め笑っていた風早の表情は、目を閉じるとまぶたの裏側にくっきりと浮かび上がってくる。
穏やかで、爽子に向けてくれるいつも通りのやわらかな笑顔。
優しい笑顔を向けられているはずなのに、何か大切なことを聞きそびれてしまったような気になるのはなぜだろうか。

      大切なものをつかみ損ねてしまったように思える。

間近にあるような気がして、手を伸ばそうとした。
けれどもつかみそこねてしまった思いは、儚いもののように、一瞬の内に腕の中をすり抜けていった。













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Re: No title

じぇぐんよん様

こんにちは~v-290
コメントありがとうございます。

楽しみにして頂いてるようで、お言葉&うれしい催促をありがとうございます。
どうなるんでしょう?
ラストはしっかり決めていますが、途中は私も実は分かりません。
実は書き出すと、勝手に二人が動いて言ってしまうこともあるのです。
3番目のお話も楽しいっていって頂けるかなあ、と思いながら少しずつ書いてますよ~。
待っててくださいね!!
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君に届け大好きな管理人です。仕事の合間に少しづつ、UPしております。 ブログ拍手重視しておりますので、お楽しみ頂ければ、拍手頂けると、日々の励みにさせていただきます。 又、日々の中、努力しながら生み出している作品です。無断転載、複製などは固くお断りいたします。 中傷は困りますがコメント歓迎です。初めての方でも作品の感想などお気軽にどうぞ。

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