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ボーダーライン (3)

こちらの記事は、『君に届け』の二次小説に関する記事です。
原作とは一切、関係ありません。内容も全く異なっております。
記事をお読みになる前に、はじめての方は、「はじめに」を必ず、お読み下さい。
管理人のお話をつくる上でのスタンスが書いてありますのでこちらの趣旨にご了承頂ける方のみ、お読みくださいますよう、お願い申しあげます。




もう今年も終わりですね。
12月はやたらと「いよいよ」という言葉を連発していました。
語彙不足を痛感。「もう12月」という言葉にしてみましたが、全然変わらないことをさらに実感(汗)。
もっと素敵な言葉を使うためには冬休みに本を読まねばと思っています。

ブログをはじめて早八ヶ月。
もともとはGWの合間に時間があったために、軽い気持ちではじめたものだったのですが、
ここまで長く続けるとは正直最初は思っていませんでした。
……これもいつも節目に書いていますが、本当にいつもそう思います。
正直ここまで続けるとは思っていなかったものですから。
この記事は本年度の最後の記事の予定です。

年の最後になりますので、みなさまにあらためて感謝の言葉を述べさせてください。
この半年間はたくさんの拍手やコメントを頂きまして、ありがとうございました。
二次サイトをはじめた年である2013年は、私にとってとても思い出深い年になりました。

この一年何度もお立ち寄り頂き、読んでくださった皆様方に、本当にお礼を申し上げます。
みなさまが素敵な新年を迎えられますように、心からお祈り申し上げます。

また、来年も皆様とお会いできるのを楽しみにしておりますので、
どうぞよろしくお願いたします。


ぽぷら












「貞子ノートの人気はすごいっ!」

 隣で力づよくうんうんと可愛らしく小首をふっているのは、遠藤朋美ちゃんこと、トモちゃんだ。北幌高校から同じ教育大学に入った生徒は何人かいた。トモちゃんもその一人だ。

 試験の迫っているせいか、キャンパス内には、たくさんの人の姿が見える。いつもガランとしている大教室の授業も今日に限りは、びっしりと埋まっている。
 トモといっしょに大教室へ向かう途中で、爽子は何人かの学生から「ノートをコピーさせてもらえないか」と話しかけられていた。爽子と全く面識のない学生まで声をかけてくるので、さっきから爽子の隣のトモはしきりに感心して、うなづいている。

 試験には小論文評価のものやレポート評価のものなど、その形式はさまざまだが数日後に行われる予定の今日の講義の試験は、ノート持ちこみ可で行われる。
 ノートのとり方はそれぞれ千差万別であり、同じ授業を受けている学生でも、一人ずつ個性がはっきりとにじみ出る。
 爽子のノートはまるでそれ自身がテキストのように、細部に至るまで丁寧に書きこまれているために持ちこみ可の試験の前には人気が沸騰し、みんなからコピーさせてとお願いされることが多い。 
 はじめは名前も分からない相手でも、やがてノートの貸し借りをきっかけとして会話を交わすようになる。その甲斐あってか、この教室内にも大分顔見知りが増えていた。

「あっ      ! 俺も、俺も!」

 そろそろ席につこうかなと思った時に、背後から遠慮のない大声が聞こえて、一瞬体をビクリとさせた。振り向くと、声をかけてきたのは、宮原朔也だった。眼鏡のよく似合う知的な顔立ちをしている宮原は、口許に快活な笑いを浮かべている。爽子とは専攻とサークルが一緒のせいか、顔を合わせる機会が多い。

「あれ!? 驚かせちゃった? ごめんな」

「宮原君、声、大きすぎるよ。貞子の耳直撃したんじゃないの?」

「そお? でも、このくらい大きな声の方が聞き取り安いでしょ。俺の声ちょうどいい周波数だと思うけど?」

「はあ……」と爽子は感じ悪く見えない程度に相づちを打つ。

「人間の耳にとっては2500~4000ヘルツくらいの声が、もっとも心地よく聞こえる。俺の声は3000くらいだからちょうどいい周波数のはずだ。だから、あれ……?」

 宮原は爽子に顔を近づけてきたと思ったら、耳に被さる長い黒髪を指ですくいあげて、そのまま耳の中心に吹きつけるようにして、ふうっと息をふきかけた。

「きゃあ      !」

「爽子ちゃん、耳はきちんと出しておいたほうがいいよ。風通しをよくしておいたほうが、聴力の状態が良くなる」

「みっ、耳に……今っ!」

 いきなりの刺激に体が飛び跳ねた。宮原は決して悪い人じゃないと思うけれども、時々突拍子もない行動をする。
 今ではもう大分慣れてきたけれども、出会った当初はその対人距離の取り方に首をかしげたものだった。
 宮原のほうでも、何かにつけて仰天する爽子の反応が面白いのか、からかうようにしてあえて距離を詰めてくるように見受けられる。

「あんまり貞子ちゃんに触ると、怖ーい彼氏にぶっ飛ばされるよ?」

「……師匠!」

 宮原の後ろからひょいと顔を出してきたのは健人だった。健人とは専攻は違っても、選択科目はいくつか重なっているので、サークル以外の場面でもこんな風にでくわすことが多い。

「俺が先ね」といって宮原の手からするりと爽子のノートを奪う。

「三浦は爽子ちゃんの彼氏知ってるの? 怖いって柔道とか空手とかやってる強い人なわけ?」

「そうそう。でも強いっていうか……怒らせると怖い。俺、何度もぶっ飛ばされるかと思ったもん。だからさ、貞子ちゃんに気安いことしないの。風早は一見そうは見えないけど、貞子ちゃんがからむと熱い男に変貌するからね」

 健人は高校時代の出来事を思いだしているのか、懐かしむように腕組みをしながら首を縦にふった。

「まじっ! そんなに恐ろしい人なのか? ガタイのいい人なの? ゴリラ系? 肉食獣系?」

「ん      爽やか系だな」

「爽やか系の熱い男!? しかも怖い? 俺の理想に結構近いかもしれないから、それは是非ともお目にかかりたい。爽子ちゃん、今度紹介してよ」

 爽やかなのは間違いないけれど熱いだの怖いだの、何か話がおかしな方向にからまっているように思える。
 宮原の勘違いをどうやって解こうかと懸命に思案していると、「風早、ビールファクトリーでバイトしてたな」と健人は思い出したように呟いた。

「そういえば俺、今度、風早におごってもらえるんだ。今度みんなで風早のバイト先にいってみようよ」

 健人の言葉を皮切りに、いつの間にか話の方向は、風早のバイト先に飲みに行くような流れになった。バイトの予定を確認しておいてほしいとお願いされる。
 
 午後の最後の講義の終わるころには、もうノートも戻ってきており、トモも今日受ける講義は全て終わったというので、地下鉄の駅まで一緒に帰ろうと歩きだす。
 大学から5分ほど離れた地下鉄まで歩き、足音の響く構内を並んで歩いていると、別れ際に思い出したように、訊ねられた。

「先週さ、風早と会ってたでしょ。二人で大通公園を歩いてるとこ、みたよ。二人とも相変わらず変わらないね」

 いつもだったら「声かけてくれればよかったのに」と笑って終わらせるような会話だったけれども、この前の風早の言葉を聞いたせいか、「変わらない」の言葉に眉をひそめる。
 師匠にも聞かれたし、最近周りが一致したようによく言われる。落ち着きない音をたてて心に大きく響いた言葉を、そのまま聞き流すことができなかった。

「変わらない……っていうのは、見た目? それとも別のこと? トモちゃんは、どうしてそう思うのかな……?」

 何気なく発した言葉に、爽子が食い入るように真剣な眼差しで問い返してきたので、トモは少し面食らったようだった。驚いたように目をくるりと動かし、「んー」といって少し考える。

「それぞれの外見とかじゃなくて、二人の雰囲気? いや空気感かなあ? 高校の時、二人で一緒に帰ってたよね。 あの雰囲気をそのまま見ているような気がしたから、そう言ってみたんだけど。……あっ、気を悪くしないでね。いつ見ても初々しい感じで、微笑ましいっていう意味だから」

「初々しいのかなあ……? もう4年もたつんだけど」 

「うん。でも、一人ずつ見てみると変わってるのかもしれないね。風早のことはよく知らないけれど、貞子は変わったよね。高校生の時よりもずい分話しやすくなったし、とっつきやすくなってると思うよ。なんていうのか、雰囲気が結構変わったような。前はちょっと話しかけずらい特殊な感じだったけど、今はそれがとれたっていうか……なんだろう……そう、可愛くなった!」

 そこまでいうと、トモは自分の言葉に納得するように、手をポンとたたいた。

「もしかしたら前からかわいかったのかもしれないけど、それって分かりづらかったでしょ。今は分かりやすいよ。そう! 分かりやすくかわいい!」

 最後の方は聞きたかったことから大分ずれてしまったような気になったけれども、かわいいといわれて素直に笑みがこぼれた。「うん」と笑顔のまま頷いてたトモは、一旦ためらうように視線を落としてから、もう一度意味ありげに爽子に視線を向ける。

「ちょっと立ち入った話し聞くようだけど……貞子さあ、こっちにきて、一人暮らし始めてるけど、風早とはお互いの家に泊ったりしてるの?」

「トモちゃん? なっ、なにいうの! とっ、泊まったりなんて、しないよっ!」

 ズバリと核心にふみこまれたせいで、必要以上に大きな声をあげてしまった。
 爽子の態度にトモは「やっぱり……」と納得したようにうんうんとうなづいている。長い間もっていた疑問が、解決されたという顔つきを見せた。

「ずい分長くつき合っているのに、貞子はまだ風早とそういうこと、考えないの? まあ、風早は貞子のそういう純粋なところもすごく好きなんだろうけど」

 自分はかなり恋愛ごとには疎いのは、すでに自覚している。それでも、さすがにトモのいうことが何を意味しているのか、すぐにピンときた。
「考えないってことはないよ……」と答えながらも、顔の赤くなるのを止められずに、どうにも気恥ずかしくてたまらない。
 頬に火傷しそうな熱を感じたせいか、急に周りが気になってきた。まだ夕方のラッシュ時でないとはいえ、時折、同じキャンパスの学生が横を通り過ぎる。
 トモも同じように思ったようだ。 
「こんなところでする話しじゃなかったね」
その日はそのまま構内で手を振り合って別れを告げた。

 熱くなった頬に風を送りこむように手で仰ぎながら、ホームへ向かっていると、不意にバッグの中で携帯が着信音を鳴らした。発信者には風早の名前が表示されている。

『黒沼? 明日の夜だけど、バイトが急になくなったんだ。友達に交代してくれっていわれてたんだけど、やっぱり出られるからっていわれて。もし黒沼の予定が空いていたら、一緒に食事でも行かないかと思って』

「大丈夫」と答えると風早は待ち合わせ場所を指定してきた。「ちょっと待って」と遮る。

 最近めっきり寒くなってきたので、自宅で鍋でもしてみようかと急に頭に浮かんだ。一人だと味気ないけれど二人ならきっと暖かい雰囲気で楽しめる。一人暮らしの風早も、きっと同じように考えてくれるだろう。
 三浦に言われた予定も忘れずに聞かなければならないけれど、それも風早に自宅に来てもらった時に落ち着いて教えてもらえば良い。

「風早くんは私の家、覚えてる? 引っ越した時に来てもらったきりだったよね? 明日の夜は食事の支度するので、うちに食べにこないかな?」

『……黒沼はいいの? 俺がお邪魔しても』

 電話機の向こうで、しばらく黙り込んでから風早は返答した。
 何かがかみあっていないような気がして、変なこといったかな? と先ほどの会話を頭の中で再生する。
 大好きな人を家に招待できるとよろこんでいる爽子と、とまどったような風早の受け答えには、何かずれを感じる。      ちぐはぐな、へだたりがあるような。

「もちろんだよ。結構風も冷たくなったから、鍋でも用意しようかと思ってたんだけど……」

 再び風早は黙り込んでしまった。やがて向こう側から小さく息をつくのが伝わってきた。

『やっぱり俺の考えすぎなんだよな。黒沼にとっては、別に何でもないことなんだよね』

 不透明なやり取りの後に、『わかった、行くから』といって電話は切れた。通話終了の電子音が耳の奥に張りついたかのように、いつまでも残る。

 ホームに通じる階段を下りていくと、見計らったように電車が折りよく到着したので、早足でそのまま車内に滑り込む。中途半端な時間帯のせいか空いていたため、十五分ほどの距離だったが、シートに座り込んだ。暗い地下を走り抜ける間、何もうつらない窓に目を向ける。

『黒沼と一定の距離なんて保てない。どうでもいい事なんてひとつもない』

 何年か前に風早にいわれた言葉が脳裏に甦る。あの時確かにそういわれたのに、距離を感じるような気がするのはどうしてなんだろう。 はっきりといわれた訳じゃない。もしかしたら、勝手に考えすぎてしまって、単なる自意識過剰なのかもしれない。風早に直接何か言われた訳ではないのに、理由もわからずに不安になるなんてと思いながらも、胸の中にぬぐいきれないよどみが残る。

 変わらない風早くんと私。
 変わらない二人の関係。

「変わらない」というのは、それほどまでに問題になるのだろうか?
 そもそも問題なんてあるのかどうかも分からない。それなのに、あえてラインの内側に踏み込む理由はあるのだろうか。

 分かっているのは、風早の瞳から感じる違和感と、そばにいるのに、どうしようもなく離れているように思える距離。
 風早の瞳を思い出すたびに、触れてはいけないものが存在するように思えて、目を向けないようにしていてもわけのわからない思いは、日ごとに大きくなっていく。

 頭に浮かんできた風早の笑顔に問いかける。

 ねえ、風早くん。 風早くんは今の二人の関係に満足している? 私たち、このままでもいいんだよね?


 風早の笑顔は細部まではっきりと思い描くことができるのに、何度耳をすませても、その声は聞こえてこない。
 何度も携帯を手に取ったが、自分の気持ちもとらえきれない中、訊ねてみることはできなかった。
















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Re: お返事遅くなりました

トモささま

こんにちは。
お返事遅くなってしまい本当に申し訳ありませんでしたv-356
トモささんとはもう何カ月ものおつき合いになってきましたね~。
いつもこちらのサイトをご訪問ありがとうございます。

ドキドキしてもらってますか?
今回は風早くんは熱いというよりも静かに内なる炎で燃え盛っている雰囲気(←ナンダ?)なので、熱い風早くん好みのトモささんにドキドキといって頂けてうれしいです。

爽子ちゃんは恋愛経験皆無ゆえ、風早くんは爽子ちゃんを大事にしすぎる……てな感じでもう少し擦れ違いが
続くかな……!?という感じです。

2月に入りやっと始動できますので、またお立ち寄り頂けるとうれしいです。
こちらこそ、コメント苦手とおっしゃていたのに、ありがとうございます。
またいつでもお気軽にコメントお寄せくださいね。



Re: お返事遅くなりました

もちゃりさま

初めまして! サイトご訪問頂きましてありがとうございますv-353
せっかく、初コメント頂いていたのに、
大変お返事遅くなってしまいまして申し訳ありませんでした(汗)
もちゃりさんのコメント頂いた時はちょうど働きバチのごとく働いておりましたが、うれしいお言葉を頂けて、
2度見? いや3度見くらいしてしまいました。
胸きゅんのツボをうまく刺激できましたでしょうか?
私の妄想に過分なお言葉、うれしすぎて恐縮しております。

ちょうどもちゃりさんのコメント前にたくさん拍手を頂けているので、もちゃりさんからの拍手でいいのかなっとうれしくなっちゃいました。

やる気もたっぷり充填ですe-271
ボーダーラインはお待たせした分、なるべく早くUPしていくつもりですので、
お時間有る時でもぜひお立ち寄りくださいね。


ぽぷら




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君に届け大好きな管理人です。仕事の合間に少しづつ、UPしております。 ブログ拍手重視しておりますので、お楽しみ頂ければ、拍手頂けると、日々の励みにさせていただきます。 又、日々の中、努力しながら生み出している作品です。無断転載、複製などは固くお断りいたします。 中傷は困りますがコメント歓迎です。初めての方でも作品の感想などお気軽にどうぞ。

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