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Love and Romance Short Stories 4   夏風のとおる道で

こちらの記事は、『君に届け』の二次小説に関する記事です。
原作とは一切、関係ありません。内容も全く異なっております。
記事をお読みになる前に、はじめての方は、「はじめに」を必ず、お読み頂いて、ご了承頂ける方のみ、お読みくださいますよう、お願い申しあげます。



このお話は一話完結の短編です。
ラヴ・ミッションを書く前に、ちょっと思いついたので。
ちょっと遅いけど今の爽やかな季節から思いつきました。
1話完結のお話自体、こちらのブログには少ないんですが、
たまにはこういうのもいいなあと思って。
楽しんでいただけたらいいなあ……


ラブ・ミッションのpart2は来週あげようかなあと思ってます。
今週はUPの予定はありません。
全く白紙の状態なので(汗)……できるかどうか、ちょっと不安ですが。
なので、来週書き上げますので、よろしくお願いします!!






窓を開け放っているせいか、カーテンは、風をはらんで、大きく揺れている。
風早はベッドにもたれかかったままで、窓から差し込んでくる初夏の陽射しに、
目を細めた。
窓の外には、目にしみこむような濃い水色の、青空が広がっている。

熱をすった風は、カーテンをふわりとふくらませ、空いた隙間をぬうように通り抜けていく。
そのままゆるい風に頬をなでられて、心がゆっくりと揺さぶられると、しまいこんでいた記憶が甦ってくるのを感じた。

浮かび上がるのは、たった今起きた出来事のように、くっきりと思い描ける、
画像の数々。

それほどまでに、はっきりと覚えている。
    静止画のように、心にとどめている情景。

目を閉じたまま、風に身をゆだねていると、何枚もの画像が心の中で重なり合っていく。 いくつもの静止画像を、再生するように。

切りとったような映像を、次々に記憶の中から見出していくと、やがてあふれだし、そして、心は飛ぶ。     高校一年の夏の日に。




高校に入って初めての夏は、振り返ってみると、決して、忘れられない夏になった。
どこかに遠出したとか、新しい何かをはじめたとか、特別な出来事があったわけではない。
毎日学校の講習にでかけて、けだるいような中途半端に暑い午後を図書室で過ごす。 それだけなのに、鮮明に、はっきりと残っている    夏の午後の記憶。
ありふれた日常のはずなのに、なぜこれほど印象的に、心に残っているのか。

もちろん、目的なく通っていたわけではない。
夏休み直前に、俺に惹かれていたと、堂々とみんなの前で宣言した彼女と、同じ時間を過ごしたかった。
講習が終わると、黒沼は図書室で午後を過ごす。
それを知ったのは、多分何かの偶然だったと思う。
すでに黒沼への気もちは自覚していたから、図書室で彼女を見かけた時、思わぬ幸運に、頭で考えるより先に、声をかけた。
まさかあんなに、黒沼を驚かせてしまうとは、思わずに。

「なに読んでるの?」

俺としては、何の気なしに声をかけたつもりだった。
なのに、誰かに声をかけられるなんて、思いもよらなかったような黒沼は、仰天した様子で、驚いたように顔を上げる。
さらに、声の主を知って、目を大きく見開いた。

声をかけただけで、それほど驚かれると思わなかった俺は、何となく気まずい思いのまま、ごまかすように黒沼の読んでいた本に、手を伸ばした。
本を俺に見せようとした彼女と、ちょうどタイミングを合わせてしまい、指先が重なる。

「あっ……」と声をあげて、うろたえたように、指を引っ込めた彼女の、
   そう、あまりのあわてぶりに、なんだか黒沼の穏やかな空間を乱してしまったような、何か悪いことをしでかしたような気持ちになった。

「花壇に植える、花の本なの……」

か細い声で答えたっきり、黒沼は本に目を戻した。
それでも、目線は本の上をさまよい、ページをめくる指は落ち着きなく動いていたので、明らかに動揺している様子が、ありありと伝わってくる。
黒沼は何かいいたげにしていたけれど、どうも誰かを目の前にすると、やたらと緊張するようだ。
「いつも来てるの?」と聞いても、「うん」と、短く一言かえすだけで、その後の会話も続かない。

声をかけないほうが、よさそうだ    大事な時間の邪魔しちゃ悪いなと、思いながら席をたつ。

後からきいたところ、黒沼は自分のとった態度のせいで、俺の気分を害したと思ったらしい。 黒沼のとまどうような態度を見ても、辛抱強く話しかけていれば、何か変わったのかもしれない。
けれども、彼女に抱く強い想いに邪魔をされて、他の奴と接するようなマイペースを貫けないのは、今も変わらない。


あの頃は、これは恋心なんだと、やっと自覚したばかりだった。
当然、そんな感情は他の誰にも芽生えた事はなかったから、
無意識の内に黒沼を目で追い続ける自分に、理解できない心のとまどいを感じていた。

最初に出会ってから、ずっと考え続けていた。
いくら好きとはいえ、これほどまでに、黒沼を目で追い続ける自分は何なのか、
いつも彼女の姿を頭にとどめたいと思う、この感情はどこから来るのか。
    どうしてこれほど心惹かれるのか。


図書室で黒沼の姿をみつけたその日以降、講習が終わると、俺の足は自然と図書室へ向くようになった。
黒沼がいる。    ただそれだけの理由で。
それでも自分にとっては、ひどく意味のあることに思えたからだ。

俺は、黒沼の邪魔をしないように、いつも死角になる場所に座っていた。
身体を伸ばせば、彼女の姿を確認できる、でも、黒沼からは俺の姿は見えない。
毎日決まった座席、決まった時間を、図書室で過ごす。
課題をやっている間、本を取りに行くふりをして、時々立ち上がっては、彼女の姿を確認する。
時折耳に入ってくる、ぱらりと本のページがめくられる音、何かを書きこむようなシャープペンシルの音。
止まった時間の中にいるような、妙な感覚を覚える中で、黒沼をその周りの空間ごと切り取って、心に焼き付ける。

記憶の中に静かに蓄積されていく、静止画の数々。

教室での黒沼は、いつも周りに気を遣っているせいか、緊張感に包まれている。
図書室で見る彼女は、教室では決して見られないリラックスした様子で、まるで、それが本来の姿のように思えた。
黒沼は、いつもすらりと背すじを伸ばして、もの思いにふけるような姿で、本に熱中していた。 やわらかな陽射しにすけた髪は風になびき、真剣な黒い瞳は本の上をゆらゆらと動く。
没頭してしまうのか、白いシャツのそで口からのぞく、細いきゃしゃな腕は、いつも本のページを夢中でめくっている。
些細な物音すら強調される図書室の中で、彼女の行動の一つ一つは、鮮やかに息づいて見えた。

澄みきった空気と、午後の淡い陽射しに取り巻かれた彼女の空間に、魅入られたように、じっと目を注ぐ。

静かな空気を乱せば、すぐに壊れてしまうような儚い空間。
    黒沼を包み込むように守っている、ひそやかな空間。

黒沼を目で追う日々が、増えていくにつれ、静止画も数をまして記憶の中に重ねられていく。 眩しいかけらをちりばめた想いの切片の数々。

時折、疲れた目を窓に向けて、青い空に目を凝らした。
大きく開かれた窓からは、夏の風が流れ込んできて、西日に照らされた色あせた紙の匂いも、眠気を誘うようなどんよりとした空気も、すべてさらっていく。
心の中に静かにたまっていく静止画の中に、その時感じた風までも、織り込まれていった。


自分でも不思議だった。
読書するのは、決して苦手ではなかったとはいえ、わざわざ図書室のような場所に行くほどの、本好きとはいえない。
自宅以外の場所で、毎日何時間も本を読み続ける経験をした覚えは、今までにない。 いくら黒沼を見ていたいとはいっても、通い続けるのはせいぜい二日、もって三日の間だろうと、ぼんやりと考えていた。

けれども、図書室を離れると、黒沼の静止画に心を占められ、他の事が手につかない。 今、彼女はどういう表情をしているだろうとか、どんな仕草をしているかが気になり、心に隙間が空いたような気になる。
放っておくと、隙間はどんどん大きくなっていき、やがて、見過ごすこと自体が間違いなのだと、不可思議な感覚に陥いる。 全くどうかしている。
結局は、足りないピースを探し出すような気持ちで、見えない引力に引っ張られるように、図書室に引き戻されるのだ。    彼女のもとへ。
そして、自分の心の動きにとまどいながらも、安心してまた記憶にとじ込む。
黒沼の静止画を。


週末をはさんで、いよいよ夏休みも終わるという段になって、もう一度、彼女に話しかけてみることにした。
今度こそはと、慎重に声をかけたものの、いつも横顔ばかり見ていたせいか、久しぶりに黒沼から真っすぐに視線を向けられて、頬の熱を感じた。
心臓は飛び出しそうなほど、高鳴っている。
      やばい。どうして、こんなにドキドキするんだ。


「風早くん、いつも来てたよね?」

「知ってたの!」


黒沼が俺の存在に気づいていたと知り、調子のはずれた声をあげた。
隠れて見ていたつもりだった。
一体いつから俺の存在に気がついていたのか、毎日図書室に通う俺は黒沼の目にどう映っていたのか。

「本棚の前でちょっと悩んで、それから同じ本を選ぶんだよね。
ただ、あの、そんなに、本を好きなんて知らなかった……けど?」

よほど俺は慌てていたらしい。
俺の様子に気を許したのか、黒沼は教室では決して見せない笑顔で微笑んだ。

4月の桜の中で見た笑顔は、消えないインクで書かれたようにはっきりと心に残っている。    何度もくりかえし心に映し出した映像。
あの時とは違うけれども、やわらかな笑顔を見て、目を奪われたまま、しばらく言葉を忘れる。


瞬間、悟った。
自分はなぜ、こんなにも毎日図書室に通い詰めていたのか。
頭の中に静かにため続けた、一枚一枚の静止画の中から、何を探し求めていたのか。


    笑顔が、もう一度見たかったんだ。



心の奥底に眠っていた願いがかなったかのように、熱いものが一気にこみあげてきた。
まるで心をさらうかのように吹いてきた夏の風の中、心のまっすぐに向かう先が、はっきりと、見えた。


    すごく、好きだ。黒沼が。



ただ、滅多に笑わない彼女が、俺に微笑みかけて、言葉を交わしただけだった。
でも、それだけで充分だった。    答えを導き出すには。

黒沼への強烈な、焦がれるような気持ちを確信して、思っていた以上に、彼女に深く想いをよせていたのに気がつく。
彼女の笑顔を、姿を、日々の記憶の中に、とどめたいと強く思っていた気持ちに。

もしかしたら無意識の内に抑えつけていたのかもしれない。
こんな気持ちを抱いた経験はなかったせいか、何か息苦しいものに絡めとられていくような危機感を抱いていた。
今までの自分から、別の自分にとって変わられてしまうような気になって。

ふっと軽い息をもらした。

今までは、相手が誰であっても、自分の気持ちをはっきりと口に出してきたのに、危惧していた通りになった。
黒沼と一緒にいると、自分ですら知らなかった別の自分が、時折顔を出す。

    黒沼は、最初っから、他の誰とも違う。



部屋のカーテンが風を受けて、もう一度大きくはためいた。

初めて感じる想いに流されながらも、手さぐりで自分の気持ちを探っていた、あの頃の自分のふるまいを、いじらしく思って無性におかしくなった。
思い返すとあの夏の日に自覚して以来、黒沼に対する気持ちは、変わるどころか日に日に強くなっている。
甘い想いの中に、ところどころ困惑してしまうような苦さがにじむ。

くすりと思いだしたように笑っている俺をみて、
「風早くん?」と、目の前の黒沼は不思議そうに頬をゆるめた。

出会った時から、黒沼とは思いが通じ合っていたような気はしていたのに、実際にそれを確認しあうまでは、ずいぶんまわり道をしてしまった。

あとになって振り返れば、こんなに分かりやすいことはない、と思うことでも、
当時は気づかないことが多かった。
初めての感情にとまどって、見るべきものに目をむけず、一方向からしか物事を見られなくって。

けれども、なかった事にすれば楽だけれども、届かない気持ちを抱えて苦しんだ裏には、一瞬一瞬背負いこんだ、本物の感情がある。
そして周り道をしてきたからこそ、見えてきたものも。
だからそれは決して無駄ではないと、教えてやれるものなら、過去の自分に教えてあげたいくらいだ。
あの頃の、なつかしく、そしていとおしい、自分に。


「好きだよ」


照れ隠しに口元を押さえる。
突然、予告もなくふってきた俺の甘い言葉に、黒沼は、えっ!?と、持っていたペンを落とした。
視線を外さない俺に、向き合っていられないのか、恥ずかしそうに両手で顔を隠してしまう。
顔を見たくて、黒沼の腕をそっとほどき、そのまま細い指を包み込んだ。


「……笑って」


そういうと、黒沼は恥ずかしそうに、やわらかな微笑みをくれた。
あの日見た、花のほころぶような優しい微笑みを。
胸が熱くなって、空気を思いっきり吸い込んで指先に力を込める。

自分の想いが全て伝わればいいと、願いながら、目を奪われたまま、離すことができずに、じっと見つめていた。
そのうちに、恥ずかしくなったのか、あのころと同じように、恥ずかしそうに黒沼はうつむいてしまったけれども、ゆっくりと顔をあげて、今度は深い笑みをくれた。

眩しい色を放つ静止画を、少しずつ、また心にためこんでいく。

あの頃と同じように肌をなでる風も、きっと、今みている空の青さも、全て同じように感じても、実際は少し違うのかもしれない。
ひとの想いは、常に変わっていて、いつまでも同じ場所にとどまっているわけではなくて……


それでも夏がくると、心はあの時と同じところに還っていく。

黒沼と過ごした夏に、感じたあの風は、心の中から消えることはない。

風が導く、その場所に、いつも立ちもどる。

そして、何度も、繰り返し、黒沼を好きになる。

      原点に還るように。
















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