FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Love and Romance Short Stories 3   笑顔の行方 (前編)

久しぶりに1巻を手にとりまして、
ラスト近くの「ひとりじめ」に、萌えてしまいました。
このシーン何度読んでも、ときめいてしまう……

一番最初に読んだ時は、このシーンの風早のこのセリフの意味が理解できなくって(←おバカ)、
?という感じだったんですが、意味が分かった時にはくぅぅ~!と
叫んでしまいました。

仕草も◎、セリフもハナマル。ほんとに椎名先生は神ですね。
爽子の笑顔を隠すようにする行動もサイコーッす。
ほんとに、このシーンは私のツボですわ~。

んでもって、今回は笑顔のお話です。
またまたお付き合い、よろしくお願いたします。







    何でも、一生懸命に頑張る、黒沼が好きだ。

わかってもらえない事も多いと思うのに、
いつも一人で頑張って、なんとか、してしまう。

だが、真っすぐ前を向き過ぎるゆえか、突っ走ってしまう時もあると、思うようになったのは、最近起きた、朝の出来事のせいだ。





教室に入って席についた途端、待ちわびていたかのように、誰かが話しかけてくる。

話といっても、毎日顔を突き合わせている男同士の話なんて、たかが知れている。
昨日見たテレビの話、プロ野球やらサッカー、スポーツの話題なんかが、多い。
そして時間がたつにつれて、気がつくと、俺の回りを取り囲むように、クラスメイトの輪が出来上がっている。

今朝は、そんな俺たちの輪のほうに、黒沼が近づいてくるのが目に入った。

……珍しいこともあるものだ。
俺がみんなと話をしている時は、よほどの用事がない限り、
黒沼は俺たちの輪の中には、入ってこようとはしない。

控えめな黒沼が、男だらけの中に入ってくるのには、きっと少しの勇気が必要なんだろう。
それともう一つ。
他人に遠慮がちな黒沼の性格からして、話の途中に割り込むようで、気が引けるのでは、と思う。

なのに、今朝はいつもと違っていた。

用事があるような、何かいいたそうな目をして、時々こっちに視線を向ける。
周りにいた女子と挨拶を交わしながらも、チラチラとこちらを気にして、明らかに俺に話しかけようかどうしようかと、悩んでいる様子だった。

「おはよう、黒沼」
声をかけながら、近寄っていく。

察して輪を抜け出した俺に、黒沼はほっとしたような表情をみせた。
だが、俺が動くと同時に、好奇心旺盛ないくつのも目が、一斉に俺を追う。
意図せず集めてしまった注目に気がついて、黒沼の頬は、ほんのりと赤く染まった。


「あっ……ごめんね、みんなと、話してたのに」

「いーよ、どうせ、たいした話じゃないし」


ひでーとか、たいした話じゃないだってよー、とか、大げさに反応する声が、
後ろから飛んできた。
茶化すような声に、そのまま無視して黒沼と話を続ける。


「あのね……お願いがあるの、風早くんに」


いいかな……!?と小声でためらいがちに、俺を見上げてきた。
何かを求めるような真剣な大きな瞳に、ドクンと心臓がひとつ、波立つ。


「お願いだってよー!」 「風早くんに、お・ね・が・い!」


周りの奴らが耳をそばだてて、俺たちの会話を、聞いている。
こっそり聞くだけなら、まだかわいげがあるが、からかうように横やりをいれてくる。

「……るせっ!」
振り返って、口うるさいヤローどもをにらみつけたが、ニヤニヤするだけで全く悪びれる様子もない。
もう相手にしてらんねっと思って、気にしないように、背中を向けた。


「みせて、もらいたいものがあって!! お手本にしたいの!」


両手をグーの形にしっかりと握りしめ、いきいきとした目を輝かせている。
プレゼントをもらえる子どものように、ワクワクしているのか、頬が少し上気している。
かわいらしいなあと、思わず、まじまじとみとれてしまった。

    でも中身はもっとかわいい。これは、俺だけの秘密。
穏やかで、控えめで、ちょっとした出来ごとにもすぐ恥じらう。
恥ずかしそうに頬をおさえる仕草とか、俺が見つめると恥ずかしそうにうつむくところとか、かわいいところをあげると、きりがない。
そんな黒沼の魅力を周りに教える気持ちは全くないが、それを知るのは俺だけなんだと、密かに優越感に浸った。

『お願いがある』っていったよな……!?
そんな、黒沼の願いを、俺が聞かないわけがない。 


「……何?、どーしたの?」

みっともないくらいに頬がゆるんでしまうのを隠すように、口もとに片手をあてる。
黒沼をみつめる、今の俺の表情は、絶対に誰にも見せられない。
特に、背中を向けているあいつらには。


「…………を見せて欲しいの」

「えっ……?」


仲いいじゃーん、とか、カップルっぽいー!とか、周りのやつらの騒がしい声のせいで、よく聞き取れない。
何?と聞き返した俺に向かって、黒沼は、さっきよりも大分大きな声で、
はっきりと声をあげた。



「風早くんの、素敵な笑顔を、みせてほしくって!!」



膝が砕けそうになった。
思わず、脱力してその場にしゃがみこみそうになったが、
朝一番で、話しかけてくる程、思い悩んでいた黒沼の気持ちを優先した。
机に体重をかけて、ここは何とか踏んばり続ける。


「笑顔だってよぉ  !」 「風早くーん! 素敵なえがお  !」


黒沼の言葉が、後ろのヤツらに聞こえてないはずがなかった。
いつの間にか教室のあちこちから、冷やかしの大きな声が飛び交っている。


どうして、黒沼が朝一番でそんな言葉をいうのか、
しっかりと思い当たる出来ごとがあった。

昨日、一緒に帰った時だ。
迷子になって泣いている、小さな子どもに出会った。
黒沼はその子を慰めようと、笑いかけた途端にその子はびくりとして、余計に泣きだしてしまったのだ。
笑顔で微笑んだだけだったのに。

すぐに親がきて、事なきを得たが、黒沼は少し考えさせられたらしい。
俺の顔をじっと見つめたと思ったら、「うらやましい……」と一言いって、ため息をついたっきり、黙り込んでしまった。
自分の笑顔のぎこちなさを、気にしている様子の黒沼に、そんなのは、自然にでるものだから、気にする必要はないと、元気づけたが、効き目はなかったようだ。
力のない笑顔をみせたっきりで、後はずっと何かを考え込んでいるようだった。
……あの時から、ずっと気にしてたんだな。


「俺のはどう?」
 
いつの間にか輪の中に、紛れ込んだ三浦が、いつも通りの軽い笑顔を、ウインクをしながら披露する。


「ありがとう、師匠……でも、風早くんの笑顔が、一番良いと思うの」


さらりと口にした黒沼の言葉が、さらに周りを盛り上げる。
みんなの前でのストレートな褒め言葉に、胸の中がこそばゆくなって、落ち着かない気分で、首の後ろをさわった。
いつの間にか、女子まで集まってきたようで、高い声まで耳に入ってくる。


「じゃあさ、風早、ちょっと貞子ちゃんにステキな笑顔、見せてあげたらあ?」


ほら、ほらあと、やけに語尾を伸ばしている、おちゃらけモードの三浦の言葉に、顔をしかめた。
首に回された三浦の腕を、煩わしく感じて、片手で邪険に払いのける。

こんな中で、のんきに笑えるわけないだろっ!!

怒鳴りつけようとして、腹に力を込めた瞬間に、思いとどまった。
目の前で、俺の表情を注意深く観察する黒沼に、気がついたからだ。
コイツを怒鳴りつけたら、黒沼、自分のせいじゃないかって気にするよな……!?

怒りを放出させるために、大きく吸い込んだ空気は、俺の体をひとめぐりして、
行き場をなくしたまま、力ない笑いへと変化していく。
俺の引きつったような笑いをみて、
おかしいなあ……と、黒沼はかわいらしく小首をかしげている。

くっ、黒沼っ! 今のは笑顔じゃないっ!! 
こんなに注目されている中、俺は今、笑顔の出来る状況じゃないっ……!


「はは……ちょっと、今は、ムリかな……」


目の前で俺を凝視している黒沼に、今は不自然な作り笑いしか、返せない。
悩んでいる黒沼には悪いけど、もう、この話は後にしてほしいと、
必死で願う俺の気持ちには、黒沼は全く気づかない様子だ。
何も気にせずに、そのままどんどん話を続けていく。


「風早くんは、昨日、私の笑顔のほうが、いいっていってくれたけど    

「へええー、風早は、貞子ちゃんのほうがいいっていったんだ!」
三浦が愉快そうに声をあげた。

「うん、それで私、そんなことないって、やっぱり風早くんの笑顔が一番って……」

「ちょい、待った!! 黒沼、その話ってあとでもいいっ!?」

黒沼と三浦の間に無理やり割り込んで、俺の存在を全く気にしていない二人の会話をさえぎった。
どうして、そんなに、全てを正直に詳しく、話すんだと、全身の力が抜けていくのを感じながらも、このまま放っておけるわけない。
もうダメっ!と首を横に振りながら、両手で作ったバツマークを黒沼の目の前につき出して、それ以上口を滑らせないように、ストップをかける。

周りにいる奴らは、ニヤニヤしながら、興味深そうに黒沼の話を聞いている。


「いいじゃーん! 俺、風早と貞子ちゃんの話、もっと聞きたいなー」


三浦が、甘えるような、優しげな声をだしてきた。
大分調子にのっている様子で、黒沼を思いやって俺が黙っているのをいいことに、根ほり葉ほり、聞きだそうとしている。
人を疑うことを知らない黒沼は、三浦の優しげな笑みにだまされて、このままだと全てを話してしまいそうだ。

黒沼っ! 三浦の笑顔はくせもんだぞ。
コイツは笑顔で相手を油断させて、ホンネを引きだすんだ!!と、心の中で叫んだ。
周りにいたクラスメートも口ぐちに、「俺もー!」「聞きたーい」などと、盛んにはやしたてながら、黒沼に催促している。


「それと、風早くんは、私の笑顔をひとりじめしたいっていってたけど   

「うわあああっ    !」


つんのめるように、前に大きく踏み出して、黒沼の顔半分にしっかりと手をあてて、口をふさいだ。
もうこれ以上は、絶対に! 何があっても! ほうっておけない!!

想像以上にやわらかな、黒沼の唇の感触を手のひらに感じて、
また心臓がはね上がった。
漂ってきた甘いシャンプーの香りが、くすぐるように、優しく、体を刺激してくる。
もともと熱くなっていた体に、さらに別の熱が襲ってきて、もう、何が何だか分からなくなってきた。

くっついている俺たちを見て、あちらこちらから、口笛を鳴らす音が聞こえる。
今はもう、教室中の視線が俺たちに集まっており、二人を囲んで大きな輪が出来上がっていた。


「なあにいー!ひとりじめなの~!風早くんはあ?」

「風早くんは貞子の笑顔が、最高に好きなんだってさ  
大好きだから、ひとりじめしたいんだってさあ  !」


悪のりしたように、ジョーが椅子の上にたち、
こんな面白い話はないとばかりに、みんなの顔を見回して大声をはりあげた。

おお   !と、周りの男子が、一斉に感嘆の声をあげる。
すっげーとか、やるねーとか、からかい半分に、大げさに感心するような声が混じる。
本気なのか、悪のりなのか、ちらほらと、拍手までが聞こえてきた。

一気に頬に熱が集まっていくような、強烈な恥ずかしさに襲われた。
黒沼に対する自分の本心が、クラス全員に知れ渡ってしまったような気がする。
ジョーの言葉も、あながちでたらめでもないので、完全に否定しきれない。


「そっ、そこまでは、いってねーよ!!」


あわてて、取り繕ったような中途半端な打ち消しが、余計に外野を盛り上げてしまったようで、もう、何をいっても周りを、活気づかせるだけだった。

状況が把握できていないのか、俺の突然の行動に驚いたのか、黒沼は目をぱちぱちさせて体を固くしたまま、動こうとしない。
指にふれるか、ふれないかの、羽のようなまつ毛の感触や、手のひらに感じる黒沼の息吹きに、心臓がいつまでもおさまらない。
恥ずかしさと、体の中から湧き出してくるような、二重の熱に、もうたまったもんじゃないと、みんなに向かって叫んだ。


「もう秘密だから、ダメ!! あとは俺たちの、秘密!」


さっきまでの騒がしさが、嘘のようにぱたりと止んで、クラス中が静まった。
俺の言葉に、みんなが、目をパチクリさせて、お互いを見合っている。
あれっ?と思った瞬間、はじけるようにクラス中に歓声が沸き起こった。


「ヒ・ミ・ツだって   !!」

「二人だけの、ヒミツ!!」

「風早くん、やーらーしー!」


一斉に口笛が鳴り響くやら、からかうような叫び声やら、大騒ぎになってもう収集がつかない。
もう……おさまり、つかねー……と、あきらめたような気持ちになって、黒沼を解放した。


「黒沼……そんなに、俺たちのこと、みんなにいわなくてもいーよ」


まいったなあと、苦笑しながら、やれやれと頭をかいた。
やっと事態を理解したのか、黒沼は真っ赤な顔をしている。


「ご、ごめんなさい。聞きたいっていわれたので、つい……」


頬を真っ赤に染めたまま、困ったような顔をして俺を見上げてきた。
ほんと、素直でかわいいよな……と、愛しさに自然に笑みがこぼれる。
あふれでてくるようなかわいさを、もっと見ていたくって、
かがみこんで、内緒話をするように、片手をそえて、黒沼に耳打ちした。


「黒沼の役にたつのは、俺の特権だけどさ、
でも、こーゆうのは、二人だけの時だから! だから、続きはあとで、な」


俺の言葉を聞いた黒沼が、ぱっと花を咲かせるように、また一段と顔を赤くする。
人目を気にしない俺の堂々とした行動に、さらに、教室はヒートアップし、周りはもう底なしにテンションがあがっている。

もう、完全に開き直っていた俺は、向き直ってみんなの目の前で、Vサインを決めた。














[君に届け 二次小説 風早 爽子] ブログ村キーワード
ランキングに参加しています。ランクインするとたくさんの方が訪問されるので励みになります。
ぽちっと応援していただけるとうれしいです。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

最新記事
プロフィール
君に届け大好きな管理人です。仕事の合間に少しづつ、UPしております。 ブログ拍手重視しておりますので、お楽しみ頂ければ、拍手頂けると、日々の励みにさせていただきます。 又、日々の中、努力しながら生み出している作品です。無断転載、複製などは固くお断りいたします。 中傷は困りますがコメント歓迎です。初めての方でも作品の感想などお気軽にどうぞ。

ぽぷら

Author:ぽぷら
FC2ブログへようこそ!

カテゴリ
月別アーカイブ
ブログランキング
ランキングにもご協力いただけたらうれしいです。お楽しみいただけたら、下のバナーをクリックいただけると、執筆の励みになりますのでよろしくお願いたします。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村 FC2 Blog Ranking
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。